研究課題/領域番号 |
15K16230
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中田 龍三郎 名古屋大学, 情報科学研究科, 研究員 (50517076)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共食 / 孤食 / 食認知 / 鏡 / おいしさ / 社会的促進 |
研究実績の概要 |
人間社会の従来のスタイルである共食は高齢化・少子化が進む日本において急速に失われている。これまで社会調査や相関研究によって、共食がヒトの行動や認知へ与える影響が指摘されてきた。しかし、その基盤となるメカニズムへのアプローチは不十分である。本研究は他者と食を共にする「共食」行動がヒトの認知機能に及ぼす効果の実験的検討を目的とした。
H27年度は共食がヒトの食認知に及ぼす効果を検討するため、鏡の前に座って試食する条件(鏡条件)と無人画像が提示されたディスプレイの前に座って試食する条件(無人条件)を設定し、両条件で実験参加者にポップコーンを試食させた。試食後においしさや甘さなどを評定させ、ポップコーンの消費量を測定した。両条件ともに孤食であるにもかかわらず、鏡条件では無人条件とくらべてポップコーンをおいしく感じ、ポップコーンの摂取割合も高くなった。甘さなど味覚には変化がなかった。実験前後で実験参加者の気分に変化はなかった。
共食すると1人で食事する「孤食」と比べて食品をおいしく感じ摂取量が増加する。これまでその要因として他者とのコミュニケーションによって高まる気分やリラックスした雰囲気が重要であると考えられてきた。それらが統制された状況であっても、鏡に映った自分の視覚刺激が存在すると、実際は孤食であっても共食と同様の効果が生じることがわかった。高齢者と若齢者に共通して鏡の効果が認められたことから、本研究の効果は加齢によって影響されないことが示唆される。近年高齢者の孤食は社会問題化している。本研究の発見は高齢者の孤食の改善に役立つ可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は鏡を刺激として使用することで、他者のもつ社会的要素をコントロールし、かつ孤食にもかかわらず擬似的な共食環境をつくりだすことに成功した。これにより、共食が食認知に及ぼす影響について、従来の研究では得ることができなかった結果を得ることができた。実験状況で実際に共食する際のコントロールの問題から、当初予定したように食認知以外の認知機能を検討するには至っていないが、共食の重要性を実験的に検討する本来の目的を鑑みると、研究はおおむね順調に推移しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
鏡を見ながらの食事の影響がどのような要因によって生じたのか、より詳細に検討する予定である。
鏡を用いた手法を応用することで、鏡による擬似的な共食が食認知以外の認知機能に影響するか検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に当初予定していた海外学会のための出張費、英語論文校正費に該当する支出がなかった。 購入予定であったハードウェアとソフトウェアの発売が延期し、H27年度に該当する支出をすることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度には海外学会のための出張、英語論文投稿のための校正を予定している。購入予定であったハードウェアとソフトウェアの発売が予定されており、購入予定である。
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