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2016 年度 実施状況報告書

セキュリティ意識向上に向けた習熟度別・年代別学習システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K16267
研究機関関西大学

研究代表者

河野 和宏  関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60581238)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード情報セキュリティ / 情報モラル / 情報教育 / 疑似体験
研究実績の概要

平成28年度は,習熟度別・年代別学習システムの開発に向けて,3D空間で情報セキュリティインシデントを学習できる疑似体験型教育ツールの開発ならびに評価を実施した.
開発した体験型ツールは,パスワードの付箋による貼り付けから,USBや書類等の紛失・置忘れといった,一般的な情報セキュリティ・情報モラル不足からくる11個のインシデントを学習できるようになっており,日常的にふとしたことで発生するインシデントに限定している.そのため,今後は年代ごとのインシデントを配置する必要があるものの,基本となるシステムの開発を進めることができた.
本ツールを用い,実際に学習者がインシデントを発見できるか,発見できなかった場合,その理由は何かなどを検証したところ,小さいインシデントほど見つけづらいという一般的な知見だけでなく,PCの電源の消し忘れやのぞき見といったいくつかのインシデントに対して「インシデント自体は目に入っていたが,インシデントになると思わなかった」と答えており,知識不足からインシデントを認識していないことがわかった.一方,数名ではあるものの,セキュリティソフトの期限切れやのぞき見といったインシデントに対し,「問題とわかっていても,なぜインシデントにつながるかわからなかった」と答えており,理由が理解できていない被験者もいることがわかった.これらの結果から,我々が主張する「同じテーマであっても習熟度の違いにより伝えるべき内容を変化させる必要がある」ことを実験的に確かめることができた.
さらに,実験の被験者に対し,どのような教育ツールが有効かアンケートを実施したところ,従来の講義形式や動画視聴などといった手法では,約20%程度のみが有効と答えたのに対し,実体験型の演習や3D空間上での疑似体験といった手法は約60%以上が有効と答えたことから,研究の方向性が正しいことを示すことができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成28年度においては,2)GBS理論を応用した習熟度別・利用者別情報セキュリティ教育の設計と評価,3)パソコン・スマートフォン端末上で動作する体験型ツールの開発と評価,4)制御焦点理論における熱望方略を用いた継続的学習の枠組みの構築,の3つを予定しており,交付申請書内では特に,2)および3)の実施を予定していた.これらのうち,3)体験型ツールの開発と評価については,実際に3Dシミュレータを用いてインシデントを疑似体験できるツールの開発が進められており,その実験結果も含めて2017年暗号と情報セキュリティシンポジウムにて発表していることからも,一定の研究成果が得られているといえる.
しかし,昨年度から引き続き実施予定であった,習熟度別・利用者別情報セキュリティ教育の設計は十分に進められておらず,特に習熟度の違いに基づく教育内容の検証ができていない.実績の概要にて,一般的なインシデントであっても,習熟度の違いにより教育内容を変化させる必要があると指摘したとおり,開発したツールと連動させて教育できるような学習プログラムを構築する必要がある.
また,熱望方略を用いた継続的学習の枠組みについては,小中学校の道徳の教科化,アクティブラーニングなどの能動的学習の実施も踏まえ,提案時と状況が大きく異なってきていることから,それらと整合性をとりつつ能動的に学習できるプログラムを構築する必要がある.
なお,IT技術の進歩および環境の変化を踏まえ,違法動画視聴による著作権問題,急速に普及しつつあるVRに対する意識など,近年のトレンドを踏まえた研究も実施し,新しい観点からユーザに新たに教えるべき内容も検討している.

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況に記した通り,平成28年度は体験型ツールの開発は順調に進んでいるものの,平成27年度に設計した教育プログラムと連動させることができていない状況である.体験型ツールの基本部分は開発できているため,年代ごとに体験できるインシデントを変えるとともに,そのインシデントがわからなかった場合,ユーザの習熟度別にインシデントの意味が学習できる学習用ツールを作成し,体験型ツールと学習用ツールとを連動させることで,平成27年度に設計した教育プログラムを実践できる枠組みを構築する予定である.
また,平成29年度に実施予定であった,熱望方略を用いた継続的学習の枠組みの開発に向けては,小中学校の道徳の教科化やアクティブラーニングなどの能動的学習法の導入など,申請時や平成27年度の研究実施時とは大きく状況が異なってきている.例えば,平成30年以降の教科書「道徳」では,現代的な課題への対応と題し,情報モラルが大きく取り上げられていることから,平成27年度において実施した分析と異なっている可能性がある.そこで,小中学生に教える内容については,新しい道徳の教科書で分析しなおす予定である.
情報セキュリティの教育法は,基本的には禁止事項を教える「警戒方略」に基づく手法であるが,平成29年度に実施予定の「熱望方略」に基づく教育法は,より自身の能力を伸ばそうとユーザが能動的・自発的に学習する,情報セキュリティの教育法としては新しい手法である.しかし,道徳の分野では,能動的学習としてアクティブラーニングが取り入れられていること,プラグマティック・アプローチによる問題解決型学習といった手法などが存在していることから,熱望方略による教育法のみに限定するのではなく,各アプローチを取り入れながら,能動的かつ継続的に学習できる枠組みを構築する予定である.

次年度使用額が生じた理由

2017年3月に予定していた交通費が,一部想定より安くなったため.

次年度使用額の使用計画

本年度も,多くの学会への参加ならびに発表を予定しているため,それらの旅費に利用する予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] インフィード広告における不快要素に関する一検討2017

    • 著者名/発表者名
      平井裕心,河野和宏
    • 学会等名
      電子情報通信学会2017年総合大会,A-12-2
    • 発表場所
      名城大学(愛知県)
    • 年月日
      2017-03-22 – 2017-03-25
  • [学会発表] リーチサイトが及ぼす著作権侵害の誘発に関する考察2017

    • 著者名/発表者名
      山上夏実,河野和宏
    • 学会等名
      電子情報通信学会2017年総合大会,A-12-3
    • 発表場所
      名城大学(愛知県)
    • 年月日
      2017-03-22 – 2017-03-25
  • [学会発表] 高齢者の視覚特性に配慮したGISマップの作成2017

    • 著者名/発表者名
      菊池伶美,河野和宏
    • 学会等名
      電子情報通信学会2017年総合大会,D-9-11
    • 発表場所
      名城大学(愛知県)
    • 年月日
      2017-03-22 – 2017-03-25
  • [学会発表] 聖地の立地状況から考える観光地での移動手段に関する一検討2017

    • 著者名/発表者名
      寺嶋奈央,河野和宏
    • 学会等名
      電子情報通信学会2017年総合大会,D-9-13
    • 発表場所
      名城大学(愛知県)
    • 年月日
      2017-03-22 – 2017-03-25
  • [学会発表] 仮想世界内でのノンバーバルコミュニケーションに関する一検討2017

    • 著者名/発表者名
      成宮良,河野和宏
    • 学会等名
      電子情報通信学会2017年総合大会,H-2-9
    • 発表場所
      名城大学(愛知県)
    • 年月日
      2017-03-22 – 2017-03-25
  • [学会発表] 3Dシミュレータによる情報セキュリティインシデントの疑似体験型教育ツールの開発に向けて2017

    • 著者名/発表者名
      河野和宏
    • 学会等名
      2017年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS 2017)
    • 発表場所
      ロワジールホテル那覇(沖縄県)
    • 年月日
      2017-01-24 – 2017-01-27

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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