平成29年度は,平成30年度以降に実施される「特別の教科 道徳」で取り扱う情報モラルの内容を分析した上で,教科書に沿った内容で小学生が自ら学習していく教育ツールを開発した. 教科書の分析では教科書の展示期間を利用したため,分析の対象は文部科学省に認定された各出版社(計8社)の小学校の道徳の教科書(計48冊)である.また,分析する際,「事例ベース・理屈ベース」「情報モラル・日常モラル」「掲載ページ数」の3つの観点から検証した.その結果,内容については,SNSトラブル,匿名性,個人情報の取り扱い,著作権,インターネットの利用上の注意点の5テーマに大きく分けられること,同じテーマであっても学年があがるにつれて,問題点に気づきやすい事例寄りの構成から,疑問を追求する理屈寄りの構成へと変化していることを示した.本プロジェクトでは,習熟度・年代毎に適切な内容を学習することでセキュリティ意識の向上を目指しており,同じ方向性で道徳の教科書も構成されていることがわかった. 次に,道徳の教科書の内容を取り入れつつ,習熟度に合わして低学年から高学年まで小学生が一貫して学習できる教育ツールを開発した.開発にあたっては「失敗することにより学ぶ」という経験を疑似的に学習可能な教材を開発するための教育理論であるGBS理論を利用した.1週目では全ての選択肢は表示されず,完全な正解にはたどり着けないようにし,1週目の内容のフィードバックを受けての2週目以降でより多くの選択肢が表示されるよう設計した.多数の分岐があり,何度も繰り返してストーリーを進めることで,知識の一層の定着を図ることが期待できる.また,低学年では事例寄りの解説をし,高学年では理屈寄りに解説することで各学年にあった学習ができるよう設計した. さらに音楽,特に編曲が人に与える効果にも着目し,編曲の効果によりシーンに適した学習が可能となることを示した.
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