これまで縄文時代の社会組織については,人骨の考古学的分析を通した研究によって行われてきた。しかし,人骨の詳細な年代が明らかではなく,同一遺跡の資料は一括した時期として扱われてきた。そこで筆者は,人骨の安定同位体分析によって,生前の食性を高精度に推定し,放射性炭素年代を行うことで帰属年代を推定した。歯のエナメル質の炭素同位体比を分析した結果,エネルギー源としては植物質食料の摂取割合が高かったことが明らかとなった。人骨の放射性炭素年代測定の結果,縄文時代後期から晩期の年代に帰属することが明らかとなった。
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