本研究の目的は、教師の体育授業実践を観察、撮影し、そこで展開される教授―学習行動を分析することを通じて、体育実践における教師の省察的実践の特質を解明することである。平成27年度は、理論的検討と学校でのフィールドワーク、教師を対象としたインタビュー調査を実施した。具体的には、理論的検討をもとに、ある教師が創った体育授業(事前検討会-体育授業-事後検討会)に参与観察に入り、①学習指導案の作成時点での教師の予期と②体育授業中に起きるエピソードとそれへの教師の対応、③事後検討会における教師の気づきについてデータを収集した。 ①については、検討を進めており、その一部については学会で報告済みである。そこで指摘したのは、教師が体育授業づくりを行う上では、子どもの技能に対する課題認識と授業のねらい結合させていること、ねらいを実現する手立てとして創意工夫を行っていること、子どもの学びの様相を予期していること、教師の「こだわり」と表現される挑戦性が存在することである。 ただ、このように事前に入念に授業を計画していたとしても、②体育授業には予期しない出来事が起こる。現在、体育授業中に起きたエピソードとそれへの教師の対応について、映像資料を分析し、体育授業で生起した出来事を記述する方法も含め、検討を行っている。 ③についても、事後検討会における教師の良質な気づきは、教師の授業に対する学びに影響を与えるはずである。本事例では、体育授業に対するどのような気づきがあったのか、詳細に分析していく。
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