本研究の目的は、教師の体育授業実践を観察、撮影し、そこで展開される教授―学習行動を分析することを通じて、体育実践における教師の省察的実践の特質を解明することである。 平成28年度の計画は、公立小中学校において、参与観察、インタビュー調査を行うことであった。 以上の目的、計画を踏まえ、平成28年度は、体育授業の学校研究に6年間取り組んでいる公立小学校を対象に調査を行った。調査方法は、体育授業の参与観察、教師に対するインタビューである。インタビュー調査の対象者は、校長をはじめ教頭、教諭である。 参与観察およびインタビュー調査をすることにより、当該校が比較的長期にわたって、体育授業をどのように創り上げて生きたのか、そこで授業空間をいかに秩序だててきたのか、子どもたちにどのような成果が表れたのかを理解しようと試みた。 今年度の取り組みの意義は次の点にあるといえる。第一に、体育授業の研究に取り組むことで、教師の実践的省察が促進されることが明らかにできたことである。そもそも、公立小学校において、体育学において蓄積されてきた知は、あまり普及していない。体育授業研究に取り組み理論的に示されている知に触れ、授業実践をすることで教師の知の転換が起こる。第二に、そうした体育授業の学校研究に組織的に取り組み得た省察が、他の教育活動においても活用される可能性がある。第三に、体育授業における秩序形成が教室空間など、学校の秩序形成につながっている可能性が示唆されたことである。
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