2017年度に引き続き、伏見院およびその周辺の京極派歌人の和歌表現の検討を中心に研究を行った。2017年度は伏見院の和歌表現における漢文学摂取の様相から、京極派和歌の特異性が漢文学摂取と直接関わるものではないことを指摘した。その成果については、別の研究課題ではあるが、2018年度に行った「中世における漢故事のパラフレーズ」(分担・科学研究費基盤研究(C),16K02379 )での成果、「中世和歌における『子猷尋戴』故事の変容」(『日本人と中国故事 変奏する知の世界』2018年9月)や「伏見院の悲秋歌の解釈について」(『人間教育』第2巻3号・2019年4月)に引き継いで反映することができた。 2018年度の当該研究は、先述のように、昨年度の研究の継続として、伏見院をはじめとする京極派歌人の和歌表現の検討を中心に行ったが、その際、先行例との比較を通して、京極派和歌の特異性は語表現そのものにあるのではなく、むしろ語の取り合わせ方にあることが明らかとなった。この成果については、2019年6月刊行予定の『古典文学の常識を疑うⅡ』に掲載予定である。 また昨年度報告書で計画した、伏見院宮廷で作成された古筆資料や絵巻と、同時代のそれとを比較して、伏見院宮廷の文芸活動の特性を明らかにする研究については、現在、調査を進めており、2019年度にはまとめる予定である。現在は、同時代の資料である、福岡市立美術館蔵の「尹大納言絵詞」の調査が残っており、2019年夏には完了予定である。 今年度の研究成果によって、伏見院宮廷を中心とする京極派歌壇の文芸活動の様相がより明らかとなり、また、なぜ伏見院宮廷が京極派歌風という特異な歌風を選択したのか、理由が解明されるはずである。
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