本研究の成果の学術的意義は、これまで鎌倉時代の一時期に起こった特異な事象と捉えられがちであった、伏見院と廷臣・女房たちの京極派和歌の活動を、鎌倉時代の文化史の流れの中に位置付けた点にある。本研究では、伏見院の和歌表現の漢詩文摂取の様相や、院に仕えた女房の『中務内侍日記』での和歌の傾向の検討を通して、伏見院宮廷で和歌が宮廷内の人々の結束を固める役割を果たしていたことや伏見院の文芸活動の基盤はあくまでも、平安時代以来の王朝文化で培われた教養にあることを明らかにした。京極派歌風の形成の過程と文化継承の様相を明らかにした点も本研究の学術的意義である。
|