本研究では、動詞形態素の観点から、省略に課せられる形態・統語的同一性条件の帰結について追究した。削除が形態・統語的同一性条件に従うのであれば、動詞形態素がT主要部に生起することから、動詞句省略では動詞形態素の不一致が許され、節削除では動詞形態素の不一致が許されないことが予測される。 本研究では、この予測は動詞句省略についてのみ支持され、動詞及び動詞のコピーは動詞句省略においてのみ形態的同一性が要求されることを示した。一方、節削除は、動詞形態素の形態統語的同一性が必要とされず、意味の同一性に基づいた焦点条件に従うことが明らかになった。
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