研究課題/領域番号 |
15K16881
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲田 宇大 (金宇大) 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (20748058)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 金工品 / 地域間交流 / 装飾付大刀 / 技術伝播 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、特に古墳時代後期後半における日本列島勢力、すなわち倭と朝鮮半島諸勢力との関係を探ることを目標に、当該時期の古墳から出土する外来系装飾付大刀の調査を進めた。中でも、精力的に調査を進めたのが、「三累環頭大刀」という種類の装飾付大刀である。三累環頭大刀は、5世紀代の新羅において流通し、特に上位の階層に属する人物の古墳から出土することで知られている。そのため、日本列島で三累環頭大刀が出土すると、基本的に新羅との関係を示すものとして理解される。しかし日本列島で出土する三累環頭大刀は、細かい意匠や盛行時期に開きがあり、本当に新羅との関係で捉え得るのかを確認するため、検討に取り組んだ。平成29年度中に26ヶ所31点の調査を実施し、日本国内で出土している事例で実見が可能なものについては、全点調査を完了した。現在、それらの成果を論文にまとめており、近日中に学術雑誌に投稿する予定である。さらに、次なる調査対象である「獅噛環頭大刀」についても、三累環頭大刀同様、実見可能資料の全点調査実施を目標に資料調査を開始している。 一方、単龍・単鳳環頭大刀の調査も継続しておこなっている。特に、平成28年度末に実施した大英博物館所蔵のゴーランドコレクション資料の調査で観察できた単龍環頭大刀が、稀少な単龍環頭大刀の末期段階の資料であることが判明したことで、国内の類例を集め、単龍・単鳳環頭大刀製作の終焉をめぐる状況についての検討を進めている。さしあたり、ゴーランドコレクション資料の紹介報告文を英語媒体で公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度末にこれまでの成果を書籍化し、発表したことを受け、平成29年度は、新たな検討対象である「三累環頭大刀」の分析作業を本格的にはじめた。その最大の目標は、国内の資料調査を悉皆的に実施していくことであったが、実見可能な資料を全点調査を完了したことで、その目標は達することができた。ただし、これらの成果を文章化し、発表する作業がやや遅れており、速やかに論文執筆を進める必要がある。 また、昨年の報告書で言及していた、獅噛環頭大刀の調査についても調査を開始している。今年度中に資料の実見を一通り終え、成果の文章化を目指す予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、今年度が最終年度となる。ここまでの継続的な資料調査の実施によって、かなりのデータが集まってきているが、上述したようにこれをアウトプットする作業が全体的に遅れている。そこで今年度は、資料調査自体を継続しつつ、他方でこれまでの調査成果をまとめて、文章化することに一定の比重を置きたい。具体的には、日本列島出土の三累環頭大刀に関する見解、単龍・単鳳環頭大刀変遷における新相型式群の出現契機に関する見解、加えて現在調査を開始している獅噛環頭大刀に関する見解を、それぞれまとめることを目標に研究に取り組む予定である。
|