最終年度にあたる平成30年度は、主に、①単龍・単鳳環頭大刀の調査・分析、②獅噛環頭大刀の調査を中心に検討した。 単龍・単鳳環頭大刀の分析は、特に、前年度まで検討を続けてきた大英博物館所蔵のゴーランド・コレクション資料をはじめとする「例外的資料」、すなわち外環に中心飾とは別個の独立した龍文を描かず中心飾の龍首の胴体部分を表現した、いわゆる「旋回式単龍環頭大刀」に着目して進めた。これらの国内出土例を可能な限り悉皆的に調査・図化し、文様や製作技術の特徴を比較した結果、単龍環頭大刀の列島内生産が軌道に乗った後にも、百済に直接的な系譜をもつ資料が混在している状況が明らかとなった。これを通して、日本列島内における装飾付大刀製作の複雑な系譜の解明に迫った。 また、今年度は未報告資料の検討・紹介にも力を注いだ。具体的には、愛知県美術館が所蔵する木村定三コレクションのうち、古墳・三国時代のものとみられる環頭大刀と耳環を対象に整理・図化作業を実施し、目録を作成して公開した。うち、とりわけ重要と考えられる単龍環頭大刀把頭について別途考察を試み、朝鮮半島における単龍環頭大刀製作の実態を論じた。 さらに、獅噛環頭大刀の資料調査を本格的に実施した。これまで、個人蔵資料を含む国内所在資料のうち、実見調査が可能なもの全体のおよそ50%を調査し、一部の単龍環頭大刀などとの意匠的、技術的共通性を。今後も引き続き資料調査を継続し、他の大刀との技術的関係を追究していく。 なお、三累環頭大刀については、国内出土事例を対象とした分類・編年検討と系統の整理を進めており、現在、論文を執筆中である。
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