2018年度はこれまでの活動の総括として,2018年度国際法学会(第121年次)研究大会において「一方的な輸入制限を通じた漁業資源のグローバルな保全に向けて:EUによるIUU漁業規制の分析」というタイトルで研究報告を行った。 2008年に制定されたIUU漁業規則の下でEUは,特定国について「IUU漁業の抑止・廃絶のための国際法(主に国連海洋法条約)上の義務違反」を一方的に認定し,状況の是正がなければ同国からの水産物の輸入を禁止するという制度を導入した。それは相手国の国際違法行為に向けられたものであることから,責任国による義務の履行を促すための対抗措置という側面を有している。 そこで報告では,このような性質を有する輸入禁止措置が,一方ではGATT・WTOの文脈において(より具体的にはGATT第20条(g)号で正当化されるか),他方で国家責任法の文脈において(「被害国(ILC国家責任条文第42条)」による責任国への対抗措置として違法性が阻却されるか),それぞれどのように評価されるかについて検討・分析を行った。 そして結論として,かかる措置は「規律管轄権の域外適用」という側面を有しており,先例を考慮するとGATT・WTOで正当化される可能性は低い。その結果,WTO加盟国が漁業資源のグローバルな保全ために採りうる政策オプションは限定されることになるが,EUの輸入禁止(およびその警告)が果たした積極的な成果を踏まえると,かかる限定は好ましくない。そこで今後は「GATT・WTOの枠内で,責任国に対する対抗措置としての輸入制限がどこまで許容され得るか」が検討課題となる,という点が指摘された。 報告内容については,そこで行われた質疑・討論を踏まえ,さらに改訂した上で今後論文の形にして公表する予定である。
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