研究課題/領域番号 |
15K16972
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
瀧澤 和子 早稲田大学, 商学学術院総合研究所, その他(招聘研究員) (50645562)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 営業秘密管理 / 競業避止契約 / 退職者 / 米国判例 |
研究実績の概要 |
2016年度は、米国での競業避止契約の実施状況について調べた。退職者(転職先企業)とその元勤務先の間で競業避止契約違反をめぐった訴訟が近年多発しているIT、食品業界の判例を中心に調査した。 米国では、州によって契約が有効と認められる要件に差が大きいが、競業避止契約が禁止されている州以外では、対象となる営業秘密の内容、契約の期間・地理的制限、元従業員の地位や職務内容、代償措置、元勤務先と転職先のビジネスの競合度合いなどに基づいて、契約の法的有効性を判断されるに。日本と比べて広範な業界・職種で競業避止契約が導入されているが、転職の自由などの観点から、訴訟の場では、法的有効性が認められず、元勤務先への損害賠償や転職の差し止めにつながらないことが増えている。なお、「ブルーペンシルルール」、ガーデン・リーブ条項など、日本とは異なる慣行も行われている。 競業避止契約を有効に活用するには、競業制限の範囲をケースバイケースで検討して契約の透明性を高め、かつ制限の内容が合理的であることを従業員との契約場面や訴訟の場で明らかにする「説明責任」が企業に求められている。 カリフォルニア州など一部の州では、原則、競業避止契約が認められていない。これは、イノベーションを促進し、「知の往来」を簡単にすることが狙いである。シリコンバレー企業では、競業避止契約の厳格な行使よりも、むしろ、退職者との良好な関係を持続する方策(フェロー制度など)や、エンジニア・研究者など向けの報酬制度の工夫などで、退職者からの情報漏えいを防止しようとする企業の事例が複数確認された。このうち、Zappos社などの特徴的な退職者管理を、ケーススタディーとしてまとめている途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健康上の理由から長時間のフライトができず、予定していた米国現地調査が実施できなかった。2016年度は国内学会などでの情報収集やネット上での文献調査およびそれらから得た知見の整理分析にとどまった。 ただし、企業のケーススタディーなど、当初の計画を超えて情報が集まった面もある。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、本研究助成を受ける最終年度となる。これまでの調査結果を踏まえ、米国での競業避止関連判例の動向について、2017年6月に国内学会での発表を行う。また、秋に現地調査を行ったうえで、12月には、企業の退職者管理のケーススタディーを発表する。それぞれの発表内容を論文としてまとめ、査読付き学会誌に投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国現地調査が1年目(2015年度)から持ち越しとなっている。 また、2016年度は、当初見積もりほどに情報・文献収集代がかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度秋に予定する米国出張の渡航費として支出する。また、現地での情報・文献収集代に費やす。 出張、学外調査中の作業効率を向上させるため、モバイルPCも購入予定である。
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