研究課題/領域番号 |
15K17131
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
琴坂 将広 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (20706569)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スタートアップ / ボーングローバル / 専門的経営人材 / ベンチャー企業 / ベンチャー投資 / 創業支援 / 国際化 / グローバル化 |
研究実績の概要 |
本年度は、過去2年間に収集したデータをさらに拡充するとともに、それらを用いて、少しづつそれを社会に還元する活動を開始することができた。本研究は創業初期からグローバル化を果たす企業の専門的経営人材の調査研究が主題であったが、調査研究の発見は新興企業のみならず、すでに規模を拡大している大企業の人材活用にも意義深いものとなりつつある。 具体的な成果としては、雑誌論文3件(日本語2件、英語1件)、学会発表3件(日本語1件、英語2件(採択済発表予定))、ディスカッションペーパー1件(英語)、分担執筆書籍1編(次年度公刊予定)である。また、初年度、次年度に収集した定量データを元にした論文執筆も、国際共著論文として2編の執筆が進行しており、次年度にはディスカッションペーパーとして刊行できる見通しとなった。 特に重要な発見は、1)専門的経営人材の果たすエコシステムの成長に対する貢献、2)企業成長における知見の獲得経路としての役割、3)組織間のノウハウの伝達の経路としての役割であった。経営チームの役割や、プロフェッショナルとしての外部人材の役割についてはある程度の知見がすでに存在しているが、それに対して新たな角度から豊富な事例を基に議論を進めるための素地を得ることができた。また、東証マザーズ上場企業の特に経営者と経営陣に関する基礎データを収集しそれをデータベース化する作業に着手し、その基礎データの入力を終えることができた。 こうした調査結果を基として、本研究は、4回の実務家向けカンファレンスへの登壇や、それらを基にした10本以上のオンライン記事も通じて、広く社会に還元することができた。学術論文としての成果を順調に目指しながら、しかし幅広く社会に対して研究成果を還元することに成功した一年であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
70件近い経営者、専門的経営人材のインタビューを完了し、またサンプル数約250社と約400社の定量的データの収集にも成功し、データ収集面では、最終年度までに取得するべきデータをほぼ取得し終えている。また、質問票調査の実施に要する費用を協力先研究機関の支出で賄えたため、その分の予算を用いて東証マザーズ上場企業の経営陣に関するデータ整備を行うこともできた。成果の発信においては、実務家向けの成果発信については想定以上に進行している。しかし、学術論文としての刊行は、ディスカッションペーパーと分担執筆の書籍のみとなっており、少し遅れが見える。しかしながら、AoM(Academy of Management)とAJBS(Academy of Japanese Business Studies)という著名国際学会の査読を通過しており、最終年度終わりまでに投稿を完了させうると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、まず分担執筆の書籍にて英語の成果発信を行う予定のため、その最終的なプロセスを確実に進める。また、AoMでの査読付きカンファレンスペーパーの発表を8月、AJBSでの査読付きカンファレンスペーパーの発表を7月に控えているため、そこで有意義なインプットを得ることを目指す。 その上で、新規で国際共著の学術論文を執筆する。これを年度内にディスカッションペーパーとして取りまとめ、それを可能な限り海外の査読付き学術誌に投稿すること、また少なくとも国際学会での発表を実現することを目指す。 執筆にあたっては、可能な限り追加的な情報収集も継続する。しかし今後はできる限り学術成果の発信に重点を置き、そちらに重点を置いた時間配分とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、過年度の質問票調査の実施において協力先研究機関の予算を使用できたために使用しなかった人件費、謝金の予算を用いて、論文に活用するデータ整備のために研究助手を採用し、東証マザーズのデータ入力を行なった。当初計画したよりも作業が多少遅延したため、支出額が予算額よりも下回った。また、本年度は海外出張を一件のみに抑制したため、これも支出減につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、2つの国際会議にて研究発表を行う予定がすでに組まれている。また、国際共同研究の推進のため、英国、およびフランスに出張し現地の研究者と議論を重ねる予定である。そのため、旅費の支出額が大きくなる。 その一方で、物品費についてはすでに初年度に必要な支出がほぼ済んでおり、また人件費についても昨年度にデータ整備の多くを終えることができたため、それ以外の支出項目に関しては、抑制される予定である。
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