研究課題/領域番号 |
15K17222
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
加藤 由衣 高知県立大学, 社会福祉学部, 助教 (30611991)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スクールソーシャルワーク / 省察 / 現任教育 / クリティカル思考 |
研究実績の概要 |
初年度の平成27年度は、先行研究の検討を中心に研究を進めた。具体的には、(1)スクールソーシャルワークの実践と教育に関する研究動向、(2)多様な専門職モデルの特徴、(3)省察的実践の視座や思考スタイル、について整理し、省察的実践を志向する現任教育の方法構築にむけた基礎研究を行った。 特に省察的実践については、Schonが新たな専門職モデルとして省察的実践を提示した背景をふまえつつ、近年重視されているクリティカル思考の特性にも着目し、①省察をとおした専門職としての発達と②クリティカルな視点の2側面から、省察的実践の実践特性を分析した。この特性分析をとおして、省察的実践では自己に対する省察、社会に対する省察、その相互作用に対する省察が行われていることを示し、それぞれの内容や方法、効果についてまとめた。以上の特性分析の結果を、スクールソーシャルワーク実践の特徴に照らして検討することで、省察的実践家としてのスクールソーシャルワーカーの理論的基盤を築くことができた。また、質的研究については、スクールソーシャルワーカーの研修やスーパービジョン、事例検討への参加をとおして、それぞれの教育特性の検討を行った。研修は、講演や講義をとおして新たな知見の獲得や自己基盤の問い直しのきっかけが得られる一方で、スーパービジョンや事例検討は、実践事例をもとに展開することで行為についての省察を行う機会となる。今後は、これらの特徴の分析を進め、先行研究をふまえた考察から、各教育が省察的実践に寄与する要因を明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論研究については、おおむね計画にそって進められているが、省察的実践の研究で先行する海外の文献を渉猟することに時間がかかっている。また質的研究については、スクールソーシャルワーカーやスーパーバイザーへのインタビュー調査を予定していたが、教育への参加をとおした研究デザインの企画に時間を要したため、インタビュー調査の実施にまでいたらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の省察的実践の特性分析の結果をふまえ、今後は、多様な現任教育方法がスクールソーシャルワーカーの変化や実践の向上に与える影響を明らかにし、省察的実践を促進する現任教育の機能の明確化に向けて研究に取り組んでいく。まず文献研究では、平成27年度に引き続き、研修やスーパービジョン、事例検討などの現任教育方法の特徴や、それらの教育プロセス、スクールソーシャルワーカーに与える影響を整理する。また、インタビュー調査の実施をとおして、スクールソーシャルワーカーの視点から、現任教育の内容とそこでの思考や実践の相互関連性を明らかにし、省察の力の向上に寄与する要因を検討する。特にインタビュー調査に関しては、研修会やスーパービジョンの場の活用等を検討することで、計画的に実施していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたインタビュー調査を実施することができなかったため、インタビュー調査にかかる旅費を次年度に使用する必要があるため。また、インタビュー調査のデータ分析用に購入予定だったノートパソコンも次年度に購入するため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に予定していたインタビュー調査を平成28年度に実施するため、その調査旅費として使用する。また、インタビュー調査のデータ分析用にノートパソコンの購入を予定している。
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