研究最終年度の平成29年度は、文献研究と質的研究により、研究課題に挙げた(1)スクールソーシャルワーカーの省察的実践を促進する現任教育の機能の明確化と、(2)省察的実践を志向したスクールソーシャルワーカーに対する現任教育の方法モデルの検討を行った。特にこれまでの研究成果から、省察的実践とスーパービジョンの親和性に着目し、まずスーパービジョン機能の分析をとおして、省察的実践を促進する要因を整理した。具体的には、スーパービジョンの教育・管理・支持の3機能が、省察の力の向上と実践レパートリーの広がりに寄与するとともに、ハード・ソフトの両面において、省察的実践のための環境整備の役割を担うことを示した。 スクールソーシャルワーカー活用事業の開始から10年が経過した現在、それぞれの実践の質を高めることと同時に、地域の状況や特性に応じたスクールソーシャルワーク実践体制・システムの確立が求められている。こうしたなかで本研究では、省察的実践を促進する現任教育が、スクールソーシャルワーク実践体制やシステムの変革・確立も視野に入れた展開を可能にすることを示してきた。またその方法は、実践のふり返りをとおして実践に埋め込まれた知を掘り起こしながら省察の力を向上させるとともに、そのなかで未来の実践に活かされる実践レパートリーを獲得するものであり、過去から未来志向への展開が特徴的であるとまとめた。 一方で、本研究を進めるなかで、省察的実践を構成する要素やそれがどのように現実化されるかが不明確であるという課題がみえてきた。そのため、省察的実践そのものの特性や要素を明らかにする基礎研究が必要であると考えている。
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