研究課題/領域番号 |
15K17260
|
研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
毛 新華 神戸学院大学, 人文学部, 講師 (90506958)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 文化適応 / 社会的スキル / 在中国の日本人 |
研究実績の概要 |
研究目的 本研究は、「社会的スキル」という観点から、在中国の日本人の中国文化の適応について検討することを目的としている。初年度に、「社会的スキルの文化的要素」の存在を確認するために、中国人の若者にとって必要とされる社会的スキルの内容およびスキル向上の方法を活用し、中国文化関連の社会的スキルトをトレーニングするプログラムを日本人に適用した。 研究方法 日本人大学生62名をランダムに実験群と統制群に振り分けた。実験群には、毛・大坊(2007)で開発された中国人用SSTプログラムを実施した。一方、統制群には、社会的スキルと無関係なプログラムを実施した。プログラム実施の開始前と終了直後において、中国文化、共通文化、日本文化の社会的スキルを反映する自己報告式の社会的スキル尺度を用いて、参加者の社会的スキルを意識レベルで測定した。また、実験実施の前後に、前記の参加者のうち39名を会話協力者と自由会話を行わせた。会話後、会話中の行動について参加者に自己評定をさせた。 結果と考察 トレーニングの効果を意識・行動レベルから検討するために、意識レベルの尺度、そして参加者の会話行動の自己評価のそれぞれを従属変数に、実験条件×実施時期を独立変数とした2要因の分散分析を行った。分析の結果から、本研究で用いたプログラムは、日本人大学生に対しても、意識レベルにおいて、中国文化と共通文化のスキルの向上に効果がみられた。また、プログラムは行動レベルにおける自己評価のうち、中国文化の部分に影響を与えている。これらの結果は中国人大学生を対象とした結果と一致している。つまり、中国文化的要素と文化共通的要素がプログラムに盛り込まれると、中国人・日本人ともに、中国文化と文化共通のスキルが向上される。このことから、本研究を通して、「社会的スキルの文化的要素」が確認できたと言えよう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、おおむね順調に進展しているといえる。 当初の研究計画では、参加者を①社会的スキル・トレーニングに参加させ、②その前後に会話実験を実施する。さらに、③会話場面を録画した映像を第三者に提示する観察実験も予定していた。この観察実験について、日中両方の大学生を対象にする計画である。しかし、言語のバリアをクリアするための翻訳や字幕作成は多く時間を取ったため、現在、③の実行ができていない。翻訳が完了したが、字幕作成が完了次第、実験を実施することを計画している。 ①と②の実施によって得られたデータを分析した結果を日本社会心理学会第56回大会、そしてアメリカのthe 17th Annual Meeting of the Society for Personality and Social Psychology(SPSP)にて発表し、多くの研究者と意見交換をすることができた。また、SPSPでの発表は同大会の SPSP Teacher/Scholar Travel Awardを受賞し、高い評価を得ることができた。 以上のような研究計画の進展状況から、おおむね研究計画書の通りであると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、研究計画書に沿って、以下のように研究を展開する。「現在までの進捗状況」で言及した観察実験に使う字幕作成を完了させ、実験に移る。それによって、「社会的スキルの文化的要素」の確認を完遂する。そして、二年目には、申請者のこれまで蓄積した異文化適応の問題点の明確化やプログラムの開発と検証の技法を活用する。それによって、まず、在中国の日本人の中国文化適応の課題点を明らかにする。次に、問題点に特化した適応促進に関するトレーニングのプログラムを考案し、文化適応の可能性を探る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に観察実験のための翻訳および字幕作成に業者にお願いしたものの、量が多いために、年度内に納品することに間に合わなかった。それが原因で、支払ができなく、残額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度にて、上記で言及した翻訳および字幕制作の納品ができ次第、残額を利用しつつ、業者に支払う。
|