本研究では、ドイツ中等教育制度の二分岐型化に伴う学校配置計画の再編過程の実態を明らかにすることを目指してきた。研究計画の最終年度である平成29年度は、平成27年度、28年度の研究成果を点検し、不備を補足するとともに、これまでの知見の最終的な成果への総合を行うことを計画していた。 まず、これまでの成果の点検から、中等教育制度の二分岐型化と学校配置計画の再編過程について理解するためには、これらの改革が地域における学校制度改革全体の中でどのように位置づけられているかにまで視野を広げて調査する必要があることが明らかとなった。そこで、調査対象として、テューリンゲン州イエナ市を取りあげ、市の教育行政部局、市内の公立ゲマインシャフツシューレ(初等・中等一貫の非ギムナジウム校)およびギムナジウム、終日制化に伴う学校支援団体に対する訪問調査を行った。そこから、中等教育制度の二分岐型化に伴う学校配置計画の再編過程は、当地においては、東西ドイツ統一後の人口変動や地域の荒廃への対応とその中での各学校の教育の改善、特に教育への多様なニーズを抱えた生徒や家庭への対応という、市の教育政策全体の中に位置づけられて進められたことを確認した。 テューリンゲン州イエナ市における以上の調査結果および前年度までに行ったメクレンブルク‐フォアポンメルン州フォアポンメルン‐グライフスヴァルト郡、テューリンゲン州キフホイザー郡、ザールラント州における調査の成果から、ドイツにおける中等教育制度の二分岐型化が、二分岐型制度の理念の受容を前提としつつ、より実際的には各地域における具体的な課題に応じて多様な形をとって進行している状況が明らかとなった。 以上のとおり、平成29年度においては、研究計画に基づき着実に研究を進め、これまでの研究成果の総合的な考察をすすめることができた。
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