研究課題/領域番号 |
15K17507
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
木村 杏子 静岡大学, 理学部, 講師 (60572633)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ベッチ数 / エッジ環 / Serre条件 / 算術階数 |
研究実績の概要 |
単純グラフから、エッジイデアルが定義される。本研究課題の目的の一つは、エッジイデアルのベッチ数をもとのグラフの組合せ論で記述することである。これまでに得られた結果として、完全二部部分グラフによるベッチ数の非消滅性の十分条件を与えたこと、very well-coveredグラフの射影次元の特徴付け(寺井直樹氏、Siamak Yassemi氏との共同研究)があげられるが、当該年度においてはこれらの結果をAMS Sectional Meeting (2018年3月、オハイオ州立大学)にて講演する機会を得た。講演後、Adam Van Tuyl氏と議論することができ、次なる研究へのヒントを得た。また、Sara Faridi氏やKuei-Nuan Lin氏をはじめとする海外の研究者と交流することができた。さらに、Augustine O'Keefe氏によるエッジ環のコーエン・マコーレー性に関する講演を聞くことができ、新たな知識を得た。 エッジ環のコーエン・マコーレー性の特徴付けは、本研究課題の目標の一つである。現在はSerreの(S_2)条件に焦点を絞って研究を行っているが、当該年度には、東谷章弘氏と議論を重ね、研究の方向性を定めることができた。しかし、それほど容易ではなく、今後も議論を重ねつつ研究を行う。 本研究課題の主目的は自由分解と算術階数の関係の解明である。当該年度においては、ベッチ数が既知(寺井・日比)であり、極小自由分解がある程度知られているstacked polytopeのスタンレー・ライスナーイデアルの算術階数の決定を試みた(寺井直樹氏との共同研究)。イデアルの生成元は帰納的な形で与えられており、それを利用したup to radicalな生成元の構成を試みたが、まだ成功には至っていない。こちらも、さらに研究を行い、問題点の解決を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度においては研究を重ねたものの、まとまった研究成果を上げることができなかったため。たとえば、stacked polytopeのスタンレー・ライスナーイデアルの算術階数に関しては、かなり時間を割き、その生成元の構造を様々な角度から眺めてみたり、先行結果と同様の方法を試すなどしてみたが、はっきりとした結果を得ることはできなかった。また、エッジ環のコーエン・マコーレー性(あるいはSerreの(S_2)条件)の特徴付けも、東谷氏との研究打合せでは、有意義な議論を重ねることはできたが、じっくり考える時間がとれなかったこともあり、裏付けとなる証明になかなか手が出ず、夢を語ることに終わってしまったため。 しかし、これらの研究は、あと一歩のところまできているように感じている。stacked polytopeのスタンレー・ライスナーイデアルに関しては、もう少し違った視点があればまた新たな発見があるように思うし、エッジ環のコーエン・マコーレー性の特徴付けに関しても、次年度以降にしっかり考察すれば、何らかの結果が得られるように思われる。したがって、当該年度の研究は、少なくとも次年度以降の研究の礎にはなると思われるため。
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今後の研究の推進方策 |
算術階数の研究においては、当面はstacked polytopeのスタンレー・ライスナーイデアルから離れ、以前に考察したcellular resolutionの視点から行う。特に、Batzies&Welkerによる、Lyubeznik resolutionを拡張した自由分解について、それからup to radicalな生成元を構成することを試みる。当該年度に読んだ論文に、使えそうな手法を見つけたので、それを試しつつ行う。 エッジ環の研究に集中的に取り組む。成果が見えてきそうなところまでは来ているが、当該年度においては、それをじっくり考える時間が取れなかった。当面は、この研究を優先的に行うことにより、当面の目標のところまで研究を仕上げる。 様々な研究について、集中する期間と冷却期間を作ることで、研究の行き詰まりを防ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は研究代表者の産休・育休のため中断した。そのため研究費が前倒しで支給された形になっている。本研究課題は2年延長する予定であるが、余剰分は、延長した年までの研究費に繰り越す予定である。 具体的には、次年度には、可換環論シンポジウムをはじめとする各種研究集会参加のための出張旅費や、東谷氏や寺井氏との研究連絡のための出張旅費に使用する予定である。研究費の支給が前倒しの形になっているため、次々年度以降にも繰り越す予定で、次々年度に、研究集会を開催する際の費用にも充てる予定である。
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