最終年度の7月頃にトルコの女性研究者であるNursel Erey氏から連絡がきた。外国人招へい研究者(長期)として研究代表者のことろに滞在したいとのことであった。残念ながら申請は通らなかったが、これをきっかけに彼女の研究テーマである「エッジイデアルのスクエアフリー冪」に関する情報収集を行うことができた。また、11月に第44回可換環論シンポジウムに参加し、最新の研究結果に触れるとともに松田一徳氏、東谷章弘氏等と交流することができ、エッジイデアルやエッジ環について情報収集を行うことができた。また、本研究課題の研究対象の一つであるエッジ環の研究をしている、大阪大学の博士課程の学生(当時)であるNayana Shibu Deepthi氏と知り合うことができた。12月には彼女を含めた、組合せ論的可換環論に関する研究をしている学生を主な講演者とする研究集会「組合せ論と可換代数ウインターセミナー」を静岡大学にて開催した。講演者は8人であったが、研究代表者が最近の研究動向を知る機会となっただけでなく、組合せ論的可換環論を研究する学生や若手研究者の交流の場として有意義なものになったと思う。 さて、研究期間全体を通じて実施した研究の主な成果は、いずれも共同研究であるが、very well-coveredグラフのエッジイデアルの射影次元の特徴づけ、エッジイデアルの極小自由分解の形に関する研究、Cameron-Walkerグラフのエッジイデアルの極小自由分解に付随する種々の不変量と$h$-多項式の次数の列の集合の決定等が挙げられる。主に研究計画に記載したエッジイデアルの極小自由分解の構造の研究に関する結果であるが、これらの成果、およびスクエアフリー冪に関する最近の研究動向、これまで行ってきたエッジ環の研究は、本研究課題の目的である自由分解の長さと算術階数との関係の解明を進めていくための礎になる。
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