最終年度である平成28年度は,複雑性1のGKM多様体の研究に関連した研究を引き続き行った.特に昨年度からの顕著な進展としてあげられるのは,複雑性1のGKM多様体がSU(3)への拡張作用を持つ場合の分類が完成したことである.結果として,大きく分けて以下の二つのクラスが現れることが分かった(i)旗多様体上のトーラス多様体をファイバーとして持つバンドル,(ii)複素射影空間上のU(2)作用を持つトーラス多様体をファイバーとして持つバンドル.この結果により以前から続けていた分類に関して,もっとも興味深いと思われるクラスに関して分類が完成したと考えられる.他のクラスについてはこの場合の分類ほど難しくはならないと予想している.
他にも複雑性1のGKM多様体の分類にかかわる研究として,組み合わせ構造が4頂点の完全グラフになるGKMグラフを分類し,それに対応する多様体が複素3次元の複素射影空間と複素二次超曲面しかないことを証明した.4頂点の完全グラフの場合のGKM多様体はトーリック多様体(複素射影空間)を除いては,すべて複雑性1のGKM多様体になるので,この結果を用いるとGKMグラフが4頂点完全グラフになる複雑性1のGKM多様体は分類で出て来た2種類しかないことが分かる.この結果は,最初の簡単な観察というべきものであり,岡山理科大学の紀要に発表した.今後この結果を一般化して,査読付きの専門誌へ投稿したいと考えている.この結果は非常に簡単な結果ではあるが将来の研究へつながっていく研究であると考えられる.
また他にも本研究とは直接的ではないが,間接的に関係する結果として,KAISTの学生たちと中心に行っている,flagged Bott多様体の研究と,トーラスオービフォールドの同変コホモロジーに関する研究を進めた.それらの結果は現在論文として執筆中である.
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