研究課題/領域番号 |
15K17750
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 貴教 京都大学, 理学研究科, 助教 (70614064)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 惑星移動 / 太陽系形成 / 冥王代 / 後期重爆撃 / 初期地球 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、原始惑星系円盤内での多様な物理過程を詳細な数値計算により検証し、最終的に全プロセスをモデル化して組み込んだモンテカルロ計算を行うことにより、太陽系形成理論の新しい枠組みである「局所惑星形成モデル」の提案を目指す。本年度は基本的な数値計算コードの作成と、今後の理論モデル拡張のための複数の基礎的研究を行った。 まず、原始惑星系円盤との相互作用により原始惑星が中心星に落下する問題(Type I migration)に対し、新たな物理過程を考慮することで問題が解決される可能性を検討した。先行研究で指摘されていた動的トルクの表式をまとめ直し、具体的な惑星形成過程に適用したところ、実際に中心星への原始惑星の落下を自律的に抑えることに成功した。また、本表式を Sasaki et al. (2010) で用いた数値計算コードに導入することで、太陽系形成理論に関する基本的な数値計算コードを再構築した。本研究で作成した計算コードは汎用性が高く、多様な原始惑星系円盤における多様な惑星形成の研究に応用することが可能である。以上の成果については、Sasaki & Ebisuzaki (in press) によって報告済みである。 一方、太陽系形成直後の巨大惑星移動プロセスや、それに伴う地球への小天体衝突過程を検証するために、地球の冥王代における天体衝突である後期重爆撃(LHB)の影響について議論した。複数のモデルのもと、幅広いパラメータ範囲で天体衝突のフラックスと、それによる大陸地殻の掘削率・溶融率を計算したところ、LHBにより冥王代の地球表面の大部分がマグマで覆われる可能性が高いことが示唆された。この成果については、Shibaike, Sasaki & Ida (2016) によって報告済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
惑星形成過程における重大な問題(惑星落下問題)について、新たな物理を導入することで、自律的に問題を回避することができる可能性を示すことができた点は、非常に大きな成果である。また、その結果も組み込み、太陽系形成理論に関する基本的な数値計算コードを再構築することができた。作成した計算コードは汎用性が高く、今後も様々な問題に適用することが可能である。数値計算コードの作成に関して、短期間でかなりの研究の進展があったと考える。 一方で、当初の研究計画の枠を超えた新たな研究課題についても積極的な取り組みを行い、この新しい課題を含めたより複眼的な研究を進めることができた。初期地球における天体衝突過程は、太陽系形成後の惑星移動プロセスの議論に対して重要な制約条件を与えることが期待される。新たな研究課題への取り組みにより、新たな太陽系形成理論の構築に向けて、非常に重要な研究成果を挙げることができた。いずれの研究課題についても、先行研究のレビューから計算コードの作成、それを用いた具体的な応用計算まで、短期間でかなりの研究の進展があったと考える。 以上の研究成果については、2本の査読論文、および国内外を含む複数の学会発表によって報告を行っている。本年度は、研究計画の遂行および新たな研究課題への取り組みにおいて、質・量ともに非常に充実した活動を行い、期待以上の研究の進展があったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
局在化した微惑星の集積による原始惑星の形成プロセスについて、多体問題専用計算機やGPUを活用した大規模N体計算を行い、原始惑星形成の位置やタイムスケールを見積もる。また、pebblesによる巨大ガス惑星のコア形成、および巨大ガス惑星周りの衛星形成について、先行研究をもとに数値計算を行い、形成条件等に制約を与える。さらに、巨大ガス惑星の形成に伴い原始惑星系円盤にギャップが開いた際に、このギャップの外縁で再び微惑星が局在・成長する可能性について、同様のN体計算により検証する。 以上の結果をモデル化して、本年度作成した太陽系形成理論に関する数値計算コードを拡張し、地球型惑星形成や巨大ガス惑星のコア形成に関するモンテカルロシミュレーションを行う。特に地球型惑星形成については、質量・密度と獲得する水の量を定量的に求める。巨大ガス惑星とその衛星の形成については、pebblesの物理量をパラメータとして計算することで、形成プロセスの妥当性・一般性を議論する。 一方で、惑星形成過程で予想される天体同士の衝突、およびそれに伴う衝突破片の再集積による地球型惑星の初期進化について検討する。天体衝突過程の詳細については、開発済みのSPHコードを巨大天体衝突用に改良し、詳細な数値計算により衝突破片の放出量等を見積もる。衝突破片の再集積過程の詳細については、N体計算を用いることで、地球型惑星の軌道進化や離心率進化を定量的に議論する。 これらSPH計算・N体計算の結果から、天体衝突に伴う地球型惑星の初期進化についての半解析的な式を導くことで、太陽系形成理論に関する数値計算コードを拡張する。再度モンテカルロシミュレーションを行うことで、形成後の惑星の進化まで考慮したときの地球型惑星の多様性、および質量・密度分布などが明らかになる。
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