研究課題
層状無機化合物の一種であるマイカは層と層の間にカチオンを有している。このカチオンは他のカチオンと置き換わることができ、マイカは層間に新たなカチオンを取り込むことができる。この取り込む性質はインターカレーションと呼ばれている。そこでこのインターカレーションを自己発言材料の相互作用として利用するための最初の段階として、インターカレーションを利用したヒドロゲルの接着システムの開発を行った。まずはじめにイミダゾリウムカチオンをゲルネットワーク中に有するヒドロゲルをラジカル重合によって作製した。得られたゲルにマイカの分散液を塗布しヒドロゲルどうしを密に接触させたところ、ヒドロゲル間は強力に接着されることがわかった。リファレンスサンプルとの比較、レオロジー測定、引張り試験、熱重量測定、X線回折などの測定からこれらの接着はマイカへのヒドロゲルネットワークに存在するイミダゾリウムカチオンのインターカレーションによるものであるということがわかった。これらの接着したヒドロゲルは加熱や冷却、各種の溶媒に浸漬させてもゲルの接着部がはがれることなく安定に存在し、さらにはわずか1.6 mgのマイカを用いているにもかかわらず10 kgの負荷をかけても接着面ははがれることはなかった。これらの強靭な接着力と環境への耐性は無機化合物によって内部に取り込まれた有機物のイミダゾリウムカチオンが保護されているためであると考えられる。
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