研究課題/領域番号 |
15K18218
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
小川 貴史 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (90515561)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 格子欠陥 / 第一原理計算 / 輸率 / 酸化物 |
研究実績の概要 |
広い酸素分圧域内で、イオン伝導性と電子伝導性を併せ持つパイロクロア型結晶構造を有するTi酸化物Y2Ti2O7に注目し、欠陥安定性、及び平衡濃度の第一原理計算を実施した。電気的中性条件により、平衡条件下での欠陥濃度を評価するため、価数をもつ点欠陥を網羅的に計算し、様々な欠陥との競合状態において、特に安定に存在する欠陥種の決定を行った。結果として、高酸素圧下では酸素イオン伝導を引き起こす欠陥種が安定となり、低酸素圧領域ではTiが還元され価数が3価となった状態で安定となることがしめされた。後者は電子がTiに局在トラップされたスモールポーラロンを示しており、電子伝導機構としてはTiサイトのスモールポーラロンのホッピングに依るものと考えられる。 以上のことから、電気伝導を担う欠陥種が酸素圧により電子的欠陥から酸素イオン関連欠陥へと変化することがこれまでの計算から示された。このような結果は、これまでの電気伝導実験が示す傾向と矛盾なく、実験結果のメカニズムを示唆するものと考えられる。本年度得られた研究成果は、今後この酸化物における輸率の評価を行うために必要となる情報である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではスモールポーラロンのホッピング伝導を示す酸化物に注目し、計算検討を進めたことで、輸率評価のための道筋が明確になってきた。また、材料選定に割く時間を抑えられたため、実際の評価に必要なステップである欠陥濃度計算が大方完了した。そのため、当初の計画以上に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Y2Ti2O7における酸素イオン、電子の移動に関する障壁エネルギーの計算を実施し、易動度を近似的に求めることを進める。以上の結果をこれまでの成果と合わせることにより、注目している酸化物における輸率の理論評価を行う事ができると期待される。得られた結果を実験とも比較し、妥当性を検討する。また同時に、ポーラロン伝導以外の酸化物における輸率検討も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算データを保持する装置や計算データの処理のためのコンピュータも導入する予定であったが、本年度はデータを生成する方法の確立に注力したため、これまでの設備で研究を進めることが出来た。そのため、次年度に導入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
計算データの保持装置と計算データの処理のためのコンピュータを導入する計画である。
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