研究実績の概要 |
結晶中点欠陥の第一原理計算から得られる形成エネルギーに基づいて熱平衡点欠陥濃度の計算する方法を複合欠陥も扱える枠組みへと拡張し、伝導キャリアのトラッピングが重要になるプロトン伝導体における検討を行った。複合欠陥の配置と排他相互作用の扱いについての計算手順はこれまで明確ではなかったため、これらの定式化を行った。また、このような点欠陥濃度計算手法を様々な結晶系に対して統一的に適用する枠組みの構築とインタフェースの検討を進め、汎用性を考慮したpythonプログラムの基礎構築を進めた。このようなプログラムを用いて、イットリアドープジルコン酸バリウムにおけるプロトン濃度を解析した結果、Yイオンとプロトンの会合によりトラップされたプロトンやフリープロトン等の各種点欠陥、及びキャリアの濃度を得ることができた。また、これらの計算結果をもとに、輸率相当物性値の評価を行うことができた。入力パラメータである熱平衡条件を系統的に計算できるようプログラムを調整することで、ドーパント依存性についても容易に得られるようになった。一方、窒素ドープチタニアの濃度計算にも活用し、効率的なドーピング条件に関する検討も行った。この場合は、窒素分子, 酸素分子などの平衡ガスを考える必要があり、これらのためのプログラム開発も行った。このようなツールは、網羅的に点欠陥の形成エネルギー計算を行った結果を効率的に解析するために今後も広く使うことができるものであり、プログラム公開に向けた準備も今後進めたい。また、有限温度におけるエネルギー評価の定量性を向上させるために必要となる格子振動の基礎的検討も行った。昨年度得られた半導体におけるキャリア濃度のドーパント依存性についての成果を詳細にまとめ、国際会議と国内会議にて発表を行った。
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