研究課題/領域番号 |
15K18386
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小沢 学 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80608787)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 精原幹細胞 / 精子形成 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
哺乳動物の生殖細胞の発生過程において,ヒストンのエピジェネティックな修飾が著しく変動することが知られており、それらの修飾を調整する遺伝子を欠損させたマウスの多くが不妊の表現型を示すことから、生殖細胞の正常な発生においてエピジェネティックな修飾が極めて重要な役割を果たしていることが明らかである。我々はH3K36/H3K4の選択的脱メチル化酵素であるKdm2aの精子形成における機能を明らかにすることを目的として、生殖細胞特異的Kdm2a欠損(Kdm2a cKO)マウスを作成しその解析を行なった。その結果、性成熟期のKdm2a cKOマウスの精巣上体内にはほとんど精子が存在しないことを観察した。そこで、FACSを用いて精細胞の分化を詳細に解析したところ、Kdm2a cKOマウスでは未分化精原細胞から分化型の精原細胞への移行が著しく阻害されることが明らかになった。さらに、Kdm2a cKOマウスから培養精原細胞株(Germline stem cells, GSC)を樹立し、マイクロアレイによってトランスクリプトームをControlと比較した結果、Kdm2a欠損GSCでは精子形成や減数分裂への関与が示唆される遺伝子群の発現が有意に低下した一方で、細胞周期の亢進に関与する遺伝子の有意な上昇が観察された。今後、この異常な表現型を引き起こす分子基盤を詳細に解析することで、Kdm2aの精子形成における役割を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年度に計画していた表現型の解析については、ほぼ計画通りの成果を上げることができている。一方、精原幹細胞の培養株(GSC)の樹立については、培養初期の細胞増殖速度がcontrolと比較してKdm2a cKOで著しく遅かったため、十分なサンプル量を得るために想定以上の時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したGSCの生理的特性を分子生物学的手法により詳細に解析することで、精子形成におけるKdm2aの分子的な役割を明らかにするとともに、得られた成果を論文として公表する準備をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、初年度に次世代シーケンサーによる解析を計画していたが、解析対象である細胞株の樹立に想定以上の時間が必要であったため、この解析費用分を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
樹立した細胞株を用いて次世代シーケンサーによる詳細な解析を行う。
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