細胞質全体に広がる小胞体は、様々なオルガネラと膜接触部位を形成し脂質やCa2+を直接やりとりする。私たちは以前、トランスゴルジ網(TGN)から細胞膜へのタンパク質輸送を仲介する新規輸送小胞CARTSを同定し、その形成に小胞体-ゴルジ体接触部位を介する脂質輸送が必要であることを報告した。本研究では、その詳細な分子メカニズムの解明に向け、小胞体-ゴルジ体接触部位の新規構成因子の探索を行い、複数の候補タンパク質を同定した。その中にはこれまで膜接触部位との関連が報告されていない機能に関わる分子が含まれ、今後の解析により膜接触部位の新たな機能の解明につながることが期待される。私たちはまた、小胞体-ゴルジ体接触部位構成タンパク質の発現抑制によりCa2+依存性積み荷選別に働くCab45がゴルジ体から消失することを見出した。このタンパク質はゴルジ体内腔のCa2+レベルに依存してゴルジ体に局在することがわかっており、この結果は小胞体からゴルジ体へのCa2+の供給に両オルガネラ膜の接触が必要である可能性を示している。 TGNから細胞膜へのタンパク質輸送に働くCARTSは、分裂期細胞においてはmidbodyに顕著に集積する。細胞質分裂におけるCARTSの役割と局在化メカニズムを明らかにするため解析を行った結果、CARTSは間期と同様にkinesin-5/Eg5陽性微小管上に存在することがわかった。CARTS形成に働く小胞体-ゴルジ体接触部位構成因子の発現抑制は、細胞質分裂異常の指標である多核化の傾向を示した。一方、小胞体-ゴルジ体接触のダイナミクスを低下させCARTS形成を阻害する変異体タンパク質の過剰発現では細胞質分裂への顕著な影響は認められず、midbodyに局在するCARTSの細胞質分裂への関与を示す十分なデータを得ることは今回できなかった。
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