研究課題/領域番号 |
15K18629
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
東 暁史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所 ブドウ・カキ研究領域, 主任研究員 (00391475)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発現制御 / エピゲノム / 遺伝子 / 植物 |
研究実績の概要 |
‘紅高’、‘ブラジル’の果皮アントシアニン含量ならびに着色関連遺伝子群の経時的発現変動を調査した。また、両品種の着色遺伝子座に存在し、着色誘導機能を有するVvMYBA1BENアレルのプロモーター領域のDNAメチル化レベルをバイサルファイトシーケンス法で解析するためのプライマー設計を行った。その結果、果皮アントシアニンの蓄積は両品種ともベレーゾン後から開始したが、その後のアントシアニン増加量は両品種間で大きく異なり、収穫時の‘ブラジル’果皮のアントシアニン含量は‘紅高’の約3.6倍となった。また、VvMYBA1、CHS3、F3’5’H、AOMTなどの遺伝子発現量は両品種ともベレーゾン期に増加したが、いずれも‘ブラジル’での発現量が‘紅高’よりも著しく高く推移した。以上の結果から、‘ブラジル’での果皮アントシアニン含量の増加は、VvMYBA1の転写能力が何らかの機構で向上し、それによりアントシアニン合成系酵素遺伝子群の働きが向上したためであると考えられた。次に、VvMYBA1BENプロモーター領域のDNAメチル化レベル解析に用いるために設計した複数のプライマーセットのうち、Set1とSet2の領域で設計した2組のプライマーセットによりVvMYBA1BENプロモーター領域を網羅できた。これらのプライマーセットを用いてPCR増幅を行った結果、Set1、Set2ともに想定したサイズのPCR増幅産物を‘紅高’、‘ブラジル’のバイサルファイト処理済DNAから得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、‘紅高’、‘ブラジル’の果皮アントシアニン含量の調査ならびに着色関連遺伝子群の経時的発現変動を調査し、両品種間でアントシアニン含量と着色関連遺伝子群の発現量が著しく異なることを明らかにした。また、着色誘導機能を有するVvMYBA1BENアレルのプロモーター領域のDNAメチル化レベルをバイサルファイトシーケンス法で解析するためのプライマー設計、ならびにPCRによる増幅確認を行い、予定した解析領域をカバーするプライマーを作成することができた。また、バイサルファイトシーケンスによるメチル化レベル解析を現在進行中であり、本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
‘紅高’、‘ブラジル’着色開始期果皮のバイサルファイト処理済DNAから得たSet1、Set2のPCR増幅産物をクローニング後、それぞれ数十クローンをシーケンス解析し、得られたシーケンス情報を用いてDNAメチル化レベルの比較解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
メチル化解析を行うDNA検体数が当初想定したよりも少なくなり、必要な試薬類の購入費が減ったことと、メチル化領域を解析するためのプライマーの検討が予定よりも少ないプライマー数で設計することができたために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のバイサルファイトシーケンス解析に必要なクローニングキット、各種試薬類の購入等に用いる。
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