①DNAメチル化レベルの解析:果皮のDNAメチル化レベルは、両品種とも成熟が進むにしたがって低下する傾向があった。さらに、「紅高」果皮のメチル化レベルは「ブラジル」よりも常に高く、収穫期のメチル化レベルは「紅高」で23.0%、「ブラジル」で3.9%となった。果肉のメチル化レベルは、「紅高」では収穫期以外は80%以上と高く維持されていたのに対し、「ブラジル」では果皮と同様に成熟が進むにしたがって低下し、収穫期のメチル化レベルは16.5%となった。一方、葉のメチル化レベルは両品種ともに、77~97%と高く維持されていた。 ②着色関連遺伝子群の発現量解析:果皮のVvMYBA1発現量は、両品種ともベレゾーン期から増加したが、着色開始期以降は「紅高」よりも「ブラジル」の発現量が高くなった。果肉のVvMYBA1発現量は、「紅高」ではほとんど発現していなかったのに対し、「ブラジル」では果皮と同様にベレゾーン期から急激に増加した。一方、葉においては両品種ともVvMYBA1の発現は認められなかった。アントシアニン合成系遺伝子のUFGT、AOMT、antho-MATE、GSTについても、VvMYBA1と同様に「ブラジル」果皮と果肉での発現量が「紅高」と比較して明らかに高くなった一方、葉では両品種とも発現が認められなかった。 以上の結果から、「紅高」から「ブラジル」が生じた原因は、「紅高」果皮、果肉組織の着色遺伝子座におけるVvMYBA1BEN近傍のレトロトランスポゾン(3’LTR領域)に存在するCpGサイトのメチル化レベルが何らかの原因で著しく低下したことで、果皮、果肉におけるVvMYBA1遺伝子の発現量が増加し、その結果、アントシアニン合成系の活性が高まったためと考えられた。
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