トウガラシの辛味成分カプサイシノイドは脂肪代謝促進作用などをもつ健康機能性成分として注目されているが、激しい辛味のために 摂取量が制限されるという問題点がある。近年、申請者らの研究グループは辛味がほとんどないながらも同様の生理活性を有するカプサイシノイド類似物質(カプシノイド・カプシコニノイド)をトウガラシから発見した。本研究では、申請者が収集してきたトウガラシ遺伝資源を利用して、低辛味カプサイシノイド類似物質の生合成を制御する因子を明らかにすることを目的としている。 研究概要 1新規の変異型pAMTアレルの解析:カプシノイド生合成にはpAMT遺伝子の機能低下が関与していることが分かっている。本研究期間内に新規の機能欠損アレルおよび機能低下アレルを見出し、各アレルがカプサイシノイド類の含量に及ぼす影響を調査した。 2カプサイシノイド類の含量増強に関わる要因の解析:高カプサイシノイド含量を示す系統の解析を行なった。通常トウガラシ果実では胎座組織でのみカプサイシノイドが合成されるのに対して、高含量系統では,胎座組織だけでなく果皮組織でも生合成されており、 これがカプサイシノイドの高含量化をもたらしている要因であることを示した。最終年度はRNA-seqのデータ解析を行い、高含量系統の果皮組織で強く発現する遺伝子群を明らかにし、それらにはカプサイシノイド類の生合成経路に関わると考えられる酵素遺伝子や転写因子が含まれていた。 3低辛味成分に関するQTL解析: 低辛味成分を高含量で含む系統と低含量系統との交雑後代を用いて、QTL解析を行ない、カプシノイド とカプシコニノイド含量を制御するQTLを複数検出した。
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