研究課題/領域番号 |
15K18751
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
谷 顕子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10709273)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 家計の小型化 / 食生活の変化 / 日本経済の様相 |
研究実績の概要 |
家計を通じて食生活の変化を捉えると、従来、和食文化や栄養学的な要因などに規定されると考えられてきた食生活は、家計を取り巻く経済要因に大きく影響されている。このことを踏まえて、平成27年度は戦後の日本経済の様相と家計の小型化との関係について明らかにした。具体的な内容は、次のとおりである。 高度成長期には地方の拡大家族世帯(3世代以上から成る世帯など)から若年層が離脱する形で都市部へ移動して核家族世帯を形成したので、家計は大幅に小型化して、世帯数は増加した。この時期は、高度成長による家計所得の増加に伴って、専業主婦も増加したため、内食(家庭内で調理して食べる食事)主体の食事であった。70 年代中盤以降、日本経済は高成長期から低成長期に転換した。経済の転換とともに共働き世帯が増加し、専業主婦の割合は減少に転じ、いわゆる「女性の社会進出」が進行した。女性の社会進出は晩婚化を招き、少子化したため、世帯規模は継続的に縮小した。さらに、90 年代初頭の平成バブル不況以降、単身世帯の割合が増加している。その結果、戦後の日本では家計の世帯規模が一貫して縮小している。「大きな家計」は「小さな家計」に変貌し、こうした家計の変化が日本人の食生活を規定することになるという関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
戦後の日本経済の様相に着目して,家計の小型化が日本の食生活の変化にどう影響を与えたかについて,総務省『家計調査』および『全国消費実態調査』などの統計データを用いた分析枠組みの設計を行った。これらは,当初の研究計画に沿って,おおむね順調に研究を進行していると評価できる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,家計の小型化が日本の食料消費に及ぼす影響を解明するための実証分析を行う方針である。その際,「家計の小型化は内食の割合を減少させ,調理済み食品や外食の割合を増加させる」という仮説の下で,家計の食料消費行動を「世帯規模の経済」を発現する生産活動として捉え,実証モデルとして定式化する。その上で,「日本経済の変動に対する調整として家計が変貌し,その結果,食生活が変化する」というパスに描かれた因果関係が観察されるかどうかを検証する予定である。
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