多包虫症は、多包条虫の幼虫(包虫)が中間宿主の肝臓や肺およびその他の臓器で増殖することにより引き起こされる感染症である。包虫は中間宿主の補体系による細胞傷害を回避しながら増殖すると言われている。そのメカニズムを明らかにするため、補体経路の阻害に関与すると考えられるセリンプロテアーゼインヒビターを3つ同定し、その機能を解析した。その結果、これらは補体阻害能を示さなかったが、多包虫の分裂が活発な胚細胞ならびに条虫において特有に見られる石灰小体に局在していることが明らかとなり、幼虫の発育においてセリンプロテアーゼインヒビターとしての機能、あるいはそれ以外の機能を担っていると考えられた。
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