HIV感染者の末梢血中の感染細胞では伸長が中途停止したHIV 由来の60-70塩基の短鎖RNA(ST)が高頻度に産生される。我々はSTを指標に感染細胞の転写活性を評価する独自の系を考案し、治療により血漿ウイルス量が良好に制御されていても、STが高レベルで検出される患者ではCD8+ T細胞が慢性的に活性化されており、免疫力の指標であるCD4+細胞数の回復が鈍いことを見出した。この知見は血漿に反映されないウイルスの持続的な転写活性化が抗HIV療法下の患者においても惹起されている確固たる証拠であると同時に、低レベルなウイルス複製と慢性炎症が互いに刺激しあう悪循環に陥っている可能性を示唆している。
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