研究課題/領域番号 |
15K19212
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
橋本 成世 公益財団法人がん研究会, 有明病院放射線治療部, 医学物理士 (40375845)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 外部照射 / 患者セットアップ / 距離画像センサ |
研究実績の概要 |
一般的に放射線治療の患者セットアップには皮膚マーカが用いられる。しかしながら、皮膚マーカは手足の位置の違いや皮膚のたるみによって簡単に動いてしまい、体軸の傾きや捻じれの補正には限界がある。そこで、申請者は新たに治療時の患者体位から得られるX線画像をスキンドメッシュアニメーションによって仮想的に生成し、皮膚マーカの基準となるDRRと比較できるシステムを提案した。H27年度の実施内容と成果は以下の通りである。 1)仮想骨格データと3次元(3D)メッシュモデルの位置合わせシステムの構築:仮想骨格データは距離画像センサで得られる体表位置を指標として生成され、3DメッシュモデルはCT画像で描出される体表や骨、肺などの輪郭から作成される。両者とも治療計画CT撮影時の体位で取得されるが、両者の座標系が異なるため位置合わせを行うシステムを構築した。CT画像と距離画像センサの両者で認識できるマーカを体表に添付し、両者のマーカ位置の距離を最小化して位置合わせをするシステムである。これにより3Dメッシュモデルの動作に必要な仮想骨格が付加できる。 2)治療時の体位を仮想空間上で再現するシステムの構築:放射線治療時の患者を距離画像センサで撮影することで治療体位の仮想骨格データを取得することができる。得られた仮想骨格データの位置情報を用いて1)で作成した3Dメッシュモデルをスキンドメッシュアニメーションで動作させる。このように、治療時の患者体位から腕等の位置変化を仮想空間上で再現させた。 H27年度では上記のシステムを構築し、ファントムを使用した位置合わせ精度の検証を行った。以上の結果は次年度において発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度に予定していた3Dメッシュモデルの生成法、仮想骨格データの取得法、両者の位置合わせシステムの構築と精度試験、放射線治療時の体位を仮想空間上で再現するシステムの構築に関しては大凡順調に実施できた。一方で仮想骨格データの取得精度に関する基礎実験が不足気味であった。そのため、次年度はファントム実験及びそのデータ解析に重点を置いていかなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き申請書の予定に沿って研究を推進する。昨年度に研究開発した位置合わせシステム及び治療時の患者体位を再現するシステムを使用し、仮想X線画像生成システムを構築する。仮想X線画像は組織や臓器毎の3Dメッシュモデルに透過性のある材質を割り当て、外部から3Dメッシュモデルを観測することで取得する。距離画像センサの外部パラメータを求め治療室内における患者位置を仮想空間上で再現させDRR画像と直接比較可能な仮想X線画像を生成する。また、DICOM RT-Planから照射領域を表示する機能を付加する。これまでに研究開発されたシステムの総合評価を行い精度向上を図る。医学物理学、放射線腫瘍学、基礎物理学の専門家を含めた協力体制の上で研究開発を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度経費はシステム開発のための距離画像センサ等の物品と開発ソフトウェアの購入にあてた。残金は研究発表用の旅費を予定していたが、大凡順調に研究が進展しているためH28年度に繰り越し、研究成果発表のための旅費として使用することで研究費を有効活用する。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は最終年度のため、これまでの成果をとりまとめ、国際会議や論文などでの報告を積極的に行っていく。そのため、国際会議や研究会等への参加登録費・出張旅費に利用する予定である。
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