最終年度も、申請書およびプロトコルに則った治療を継続していった。引き続きデータ解析、論文化し国際誌に発表していった。 英文誌に投稿中の第5報では、うつ病患者のTemperament and Character Inventory(TCI)における傾向とパロキセチン血中濃度-治療効果の関係について報告した。既報ですでに、特定の遺伝子型とパロキセチン-治療反応の関係について報告していたが、人格傾向でもパロキセチン血中濃度-治療効果の関係に違いがでることを検討したものである。結果、低Novelty Seekingかつ高Harm Avoidance群をはじめ、特定の人格傾向を示す群ではパロキセチン-治療反応において負の相関がみられた。 また同様に投稿中の第6報では、既報の早期治療反応性からの治療反応予測といった試みを発展させ、初診時点の症状の傾向から治療反応を予測することを検討した。その結果、高Apparent Sadness得点群を始めとした、特定の症状傾向を示す群ではパロキセチン-治療反応の関係に負の相関がみられた。 第5報および第6報はいずれも英文誌に投稿中であり、受理・出版される見込みである。 第1報から第6報までの研究成果から、薬物血中濃度のみならす患者の人格、症状そのものといった観点からの治療反応の予測が可能となることが示唆された。これまでの一連の研究成果により、適正使用を目的としたうつ病治療反応予測のための多次元モデル構築を前進させることができた。
|