①解析サンプルの選択およびDNA・RNA抽出 昨年度から引き続き、腫瘍サンプルを収集。合計14サンプル(原発巣10例、リンパ節転移部位4例)からtotal RNAを抽出し、②の解析を行った。 ②mRNAに対するトランスクリプトーム解析 上記についてマイクロアレイ解析を行ったところ、転移およびその後の再発を認めない症例(n=3)、転移を有する症例(n=4)、転移を有し死亡に至った症例(n=3)での発現比較を行うことが可能であった。その結果、cell cycleや転写に関与する遺伝子群が有意な変化を認めていた。また、同時に同サンプルから癌組織内リンパ球を抽出し、細胞表面分子発現に基づいて免疫状態の分類を行ったところ、転移を認めない症例では、細胞表面分子発現がその他の2群と比較して有意に低い結果となった。膀胱癌では、遺伝子発現に基づいて、乳がんと同様に4群に大別されると報告されており、特にその中で、SCC likeやp53関連群についてFOXM1やPLK1の発現で代表されるgenome instabilityを有していると言われている。今回の我々の解析結果でも、転移を有し死亡に至った症例はFOXM1の発現が高いことから、癌細胞のgenome instabilityが癌組織内免疫担当細胞の発現様式に影響を及ぼしていることが判明した。現在、膀胱癌においても抗PD-1抗体を始めとする新規免疫療法が有望な治療法とされており、今後更なる解析が必要であると考えている。 ③DNAに対する膀胱癌に特徴的な遺伝子をターゲットとした次世代シークエンス TCGA Research networkのデータベースより、特にp53のmutationの割合が高いことに注目し、genome instabilityとの関係を明らかにするため、ターゲットシークエンスを施行予定としている。
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