研究課題/領域番号 |
15K20204
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩本 依子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70636480)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 角化重層扁平上皮 / 線維芽細胞 / プロスタグランジンE2 |
研究実績の概要 |
マウス真珠腫骨破壊モデルを用い、骨表面上への破骨細胞誘導を確認し、定量化を行った。ケラチノサイトとファイブロブラストを混合注射して得られた腫瘤では、ケラチノサイト単独腫瘤に比べ、有意に多くの破骨細胞が誘導されることが分かった。しかし、μCTでは、明らかな骨破壊は認めなかった。また、腫瘤内のファイブロブラストがRANKLを高発現していることが判明した。 ケラチノサイトから分泌される液性因子がファイブロブラストのRANKL発現を上昇させる機序について検証を行った。液体クロマトグラフィーを行うには培養上清が不足していたため、サイトカインアレイにより上清に含まれるサイトカインを検証した。18種のサイトカインの上昇が検出され、これらのうちレセプター分子を除いた9種のサイトカインのmRNA発現を確認した。この中で、ケラチノサイトにおける発現がファイブロブラストに比して高い傾向にある4種のサイトカインを選び、リコンビナントタンパクによるRANKL発現への影響を検証したが、直接的なRANKL発現への影響は認めなかった。そこで、骨芽細胞でRANKLの発現を上昇させるとの報告があり、ケラチノサイトで合成されることが知られるプロスタグランジンE2(PGE2)の効果を検証した。PGE2を加えた培地で培養したファイブロブラストでは、有意にRANKL発現の上昇が見られた。 更に、ケラチノサイトと共培養したファイブロブラストが、実際に単球より破骨細胞への分化誘導能を持つ事を、ファイブロブラストと骨髄由来単球の共培養系を用いて定量的に評価した。 これらから、ケラチノサイトから分泌される液性因子が、ファイブロブラストのRANKL発現を上昇させ、それにより破骨細胞を分化誘導することが明らかとなった。この結果は、マウス骨破壊モデルの事象とも一致しており、ヒト真珠種においても骨破壊の要因となっている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、液体クロマトグラフィーは技術的問題にて施行不可能であったが、代替手段としてサイトカインアレイを用いることで、実験を進行させることができた。また、マウスを用いた実験系では、マイクロCTにて明らかな骨破壊が認められなかったが、骨表面に誘導された破骨細胞を定量的に評価することで、骨破壊との関連を明らかにすることが可能となり、安定した定量系として確率することができた。 更に、ケラチノサイトから分泌される、ファイブロブラストのRANKL発現促進因子を探索する目的で、サイトカインアレイを実施した。分泌が確認されたサイトカインによるRANKL発現をリコンビナントタンパクを用い行ったが、直接作用は見られなかった。一方でプロスタグランジンによるRANKL発現上昇作用が確認され、現段階ではプロスタグランジンE2を候補にあげており、当初の平成27年の予定通りに概ね進行している。
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今後の研究の推進方策 |
ケラチノサイトより分泌され、ファイブロブラストにおいてRANKL上昇に寄与する因子の候補の一つとしてプロスタグランジンE2を挙げている。in vitroでの培養系において、ケラチノサイトからのPGE2分泌をELISAにて定量評価する。また、LPS投与下でのPGE2分泌についても検証する予定である。更に、PGE2がマウス骨破壊モデルに及ぼす影響を、合成阻害剤のインドメタシンを用いるなどして定量評価する予定である。 また、ヒト真珠腫検体においてのPGE2の関与を、ヒト検体を用いて検証を行う。PGE2の評価については、新鮮な検体が必要となるため、今後新たに手術にて得られた検体を用いる予定としている。ヒト検体におけるPGE2受容体についても検証を行い、ヒト真珠腫における、プロスタグランジンE2の影響を実証する事を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会への参加を取りやめたため、旅費の余剰が生じた。 また、液体クロマトグラフィー施行予定であったが、施行不可能となったため、関連する費用が不要となった。また顕微鏡および手術器具の購入を予定していたが、平成27年度は使用しなかったため、平成28年度での購入を検討している。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスモデルでの骨破壊評価に必要となるため、平成27年度に購入を見合わせた顕微鏡や手術器具を購入する予定である。また、サイトカインなどの試薬類や実験用マウスについても追加購入が必要であり、追加予算を計上する予定としている。更に、マウスケラチノサイトやヒト検体でのPGE2発現の検証を行うため、ELISAによる測定などを予定しており、当初ケラチノサイトやファイブロブラストへの遺伝子導入に計上していた予算を充てるものとする。また、平成27年度に本研究成果として発表した論文の報告目的で、海外学会への参加を予定している。
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