研究実績の概要 |
哺乳類の歯は大臼歯を除いて1度だけ生えかわる2生歯性であるが、通常は萌出する前に退化・消失する第3歯堤が存在する。ヒトの場合も永久歯の次に第3歯堤が存在することが報告されている。本研究では歯の形成過程において、特に歯数の制御に着目し、機能を抑制することで歯数が増加する分子(USAG-1 など)と、逆に機能を亢進することで歯数が増加する分子(BMP-7など)を標的分子としている。これらの標的分子を第3歯堤の局所において機能抑制または機能亢進することにより、永久歯の次に萌出する第3の歯を形成させ、歯の再生を目指す。USAG-1とBMP-7は歯の形態形成・大きさにおいて重要な役割を果たす可能性があることを見出し、報告した(Saito K., 2016)。 ヒトにおいても過剰歯を認める症例を検討し、報告した(Kiso H., 2016)。さらに、非症候性の多発性過剰歯の2例について検討し、その発生由来として第3歯堤のほかに幹細胞が関与する可能性を考察し報告した(Takahashi K., 2016)。 これまでに胎生15日のUSAG-1遺伝子改変マウスの上顎切歯部切除片とBMP-7を含浸させたゼラチンスポンジとを合わせて同種マウスの腎皮膜下に移植し20日間成長させた結果、USAG-1欠損マウスとUSAG-1ヘテロ接合体マウスにおいて過剰歯をみとめ、上顎切歯部ではBMP-7の添加により、USAG-1ヘテロ接合体マウスにも過剰歯を形成することを実証し報告した(Kiso H.,2014)。 この結果を踏まえ、胎生15日の野生型マウスの上顎切歯部切除片に対して局所的にUSAG-1の機能を抑制し、さらにBMP-7 を局所投与することによって歯数が増加するかどうかを明らかにし、局所でのUSAG-1遺伝子の発現抑制により同様に歯数の増加が再現できるシステムの確立を目指す。
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