研究課題/領域番号 |
15K20821
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
寺沢 重法 北海道大学, 文学研究科, 助教 (60632156)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 台湾 / 宗教性 / 精神的健康 / 台湾社会変遷基本調査 / エスニシティー / 職業 / レビュー / 二次分析 |
研究実績の概要 |
1.研究課題のうち特に台湾の宗教と社会階層の関係を解明するために、台湾社会変遷基本調査を用いて、主に多面的宗教性と職業の関係、親の宗教属性と回答者の学歴の関係、慈済会所属者の階層変容について分析を行った。その際、台湾がエスニシティー社会から階層社会に変化しつつあるという筆者のこれまでの実証研究の成果を加味し、エスニシティーを補助線として宗教性に対する階層要因の影響力を探索した。こうした補助線を引くことにより本研究を宗教社会学のみならず台湾社会論とうまく接続することが可能になった。 2.上記課題で取り上げた宗教性の中で職業と相対的に強い関連の見られたものについて、精神的健康との関連を分析するための予備的分析を行った。使用すべき精神的健康の尺度、分析に使用するモデルの検討を行い次年度につなげる作業を行った。 3.欧米における宗教と精神的健康に関する実証研究のレビュー作業に着手した。Journal for the Scientific Study of ReligionやReview of Religious Reseach等の関連するメジャー雑誌数誌から約20年分、計約150点の論文を抽出し、レビュー対象とすべき論文の選定、知見の内容のコーディング方法の検討、論文の読み込みを開始した。現在もレビュー作業は継続中である。 4.以上の研究成果を踏まえて、学会、研究会における発表と論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、社会階層(職業)と多面的宗教性の関連の計量研究を終えることができた。その際、近年の日本における計量社会意識論を踏まえることでより網羅的な分析が可能になるとともに計量社会意識論の発展的展開の可能性が見え、また社会階層とエスニシティーの比較という視点を盛り込むことで台湾の社会変動論としての広がりをもたせることができた。慈済会所属者の分析も終了し、親の宗教属性と教育達成という発展的なテーマについても取り組むことができた。レビューについても第1段階の作業を終え、本作業の準備が完了した。ただし、家族の病気、不幸等の理由により当初予定していた学会参加、発表のいくつか、および現地調査を急遽キャンセルせざるを得ない状況が発生した。そのため次年度に予定していたレビュー作業と予備分析の一部を本年度に前倒する運びとなった。だが研究計画全体としての大きな変更はない。
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今後の研究の推進方策 |
1.研究会用の1で述べた分析結果について、多年度の調査データを分析し社会階層と宗教性の関連の変化を検討する。 2.社会階層・宗教性・精神的健康に関する分析を本格化させる。具体的には、宗教性を媒介とした社会階層と精神的健康の間接的影響関係や宗教性と精神的健康の関連が社会階層によってどのように異なるのかといった複雑な条件を組み込んだモデルを分析する予定である。 3.レビュー作業について本分析を行い、レビュー論文としてまとめる。 4.以上の研究成果をもとに口頭発表、論文執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度、物品を購入する予定があり、それに合わせて計画的に残額を残している。
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次年度使用額の使用計画 |
分析に用いている統計ソフトの最新版を購入する予定である。この最新版を使用することで分析の精度が大幅に向上する予定である。
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備考 |
両者ともに研究者がかねてより使用しているwebページであり本研究課題においても引き続き情報発信のために使用している。(1)は研究者の公式サイトであり業績の一覧、電子データへのリンク先などを掲載してある。(2)は研究者のブログであり本研究課題に関する重要な論文やデータセットの紹介、新刊論文の紹介などを行っている。
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