研究課題/領域番号 |
15K20892
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
江口 美陽 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (10520778)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 励起子ポラリトン / 局在表面プラズモン / ポルフィリン / 銀ナノ粒子 / 単量体 / 層状ケイ酸塩 |
研究実績の概要 |
金属ナノ粒子と色素からなる複合体のナノ構造制御による励起子ポラリトンの結合強度制御に取り組んでいる。複合体は銀ナノ粒子とカチオン性ポルフィリンにより調製した。この際、ポルフィリンを単量体とするため、また銀ナノ粒子表面とポルフィリンの距離および金属表面に対するポルフィリンの配向角を規定することを目的として、両者の複合化には層状ケイ酸塩を利用した。層状ケイ酸塩はカチオン交換性を有しており、カチオン性のポルフィリンを層表面に取り込むことができる。これまでの研究で我々は、ある種の層状ケイ酸塩表面において特定の種類のカチオン性ポルフィリンは会合を示さないことを明らかにし、また、溶媒毎の配向角を見積もることにも成功しており、こうした知見を利用したものである。本研究では、銀ナノ粒子表面を層状ケイ酸塩で被覆した後に、ポルフィリンと複合化した。励起子ポラリトンの形成には励起子とポラリトン(本研究ではそれぞれポルフィリンと銀ナノ粒子に誘起されるLSPR)の極大吸収(消失)波長が近いことが不可欠であることから、層状ケイ酸塩を介した銀ナノ粒子-カチオン性ポルフィリン複合体においては中心金属の違いで極大吸収波長を変化させた5種のポルフィリンを用い、より結合の強い複合体を探索した。以上の検討から、本系では銅ポルフィリンを用いたときに最も強い結合を持つ励起子ポラリトンを確認した。本研究では単量体であることが保証されているポルフィリンによる励起子ポラリトンの形成に初めて成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は銀ナノ粒子の粒径を制御することで励起子ポラリトンの結合強度を最適化する予定であったが、再現性のよい合成ができなかったため、ポルフィリンの中心金属を変えることによる波長制御に切り替えた。予定外の方針変更ではあったが、結果的にはより再現性よく励起子ポラリトンの結合強度を見積もることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
励起子の配向と局在表面プラズモン双極子の方向の空間配置と励起子ポラリトンの結合強度の関係を明らかにするため、ディスク型銀ナノ粒子-層状ケイ酸塩-金属ポルフィリン複合体を利用する。複合体を分散させる溶媒を変えることでポルフィリンの配向角を調整し、結合強度への影響を明らかにする。LSPRとしてはより短波長にピークを持つものが必要となるため、ナノ粒子の調製にも工夫を必要とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新たに必要となった銀ナノ粒子合成のために人件費が必要となったから。
|
次年度使用額の使用計画 |
合成試薬など消耗品700千円、旅費(国内出張2回)200千円、研究業務員人件費1000千円、英文校正100千円
|