研究課題/領域番号 |
15K21165
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
那須野 亮 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 研究員 (90708116)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質脱ニトロ化酵素 / aro7破壊株 / 酵母 / 3-ニトロチロシン / タンパク質ニトロ化 |
研究実績の概要 |
タンパク質脱ニトロ化酵素が、遊離3-ニトロチロシン(3NT)をチロシンへ変換する活性を有すると仮定し、チロシン要求性株がチロシン非含有・3NT含有培地で生育可能か検証した。まず、チロシン要求性株候補としてチロシン合成経路の遺伝子TYR1, ARO7に着目した。Δtyr1株とΔaro7株を構築し、チロシン要求性を評価したところ、Δtyr1株はチロシン要求性を示さず、Δaro7株はチロシン・フェニルアラニン要求性を示したことから、Δaro7株をスクリーニング用株として選定した。続いて、Δaro7株をチロシン非含有・3NT含有培地で培養したが生育しなかった。酸性培地に亜硝酸塩を添加してNOドナーとし、ニトロ化ストレスを加えた条件でも、同様の結果であった。一方で、野生株は3NT単一窒素源培地で生育したことから、3NTは細胞内に取り込まれると考えられた。以上の結果から、タンパク質脱ニトロ化酵素には、遊離3NTをチロシンへ変換する活性はない(少なくとも生育に必要な量のチロシンは合成できない)と結論した。 続いて、生化学的に脱ニトロ化酵素を探索するため、タンパク質ニトロ化レベルが高い条件で脱ニトロ化酵素活性が上昇すると仮定し、ニトロ化レベルが高い細胞の処理・培養条件を探索した。細胞をパーオキシナイトライト(PN)特異的蛍光プローブ(NiSPY-3)で処理し、種々のストレス条件に曝したが、PNの増加は検出できなかった。一方で、同様のストレス条件で処理した細胞からタンパク質を抽出し、抗3NT抗体によるウェスタン解析を行ったところ、特定のストレス条件下でタンパク質ニトロ化が起こることが分かった。また、細胞の増殖時期に依存してタンパク質ニトロ化レベルが変化することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質脱リン酸化酵素が遊離リン酸化チロシンに対して活性を示すことから、本研究では、タンパク質脱ニトロ化酵素が遊離3NTをチロシンに変換する活性を有すると仮定して、研究を開始した。しかし、チロシン要求性株を用いたスクリーニングの予備実験の結果、酵母細胞は、ニトロ化ストレスの有無にかかわらず、遊離3NTをチロシンに変換する酵素活性を持たないことが明らかになった。本研究においては、3NTを用いたスクリーニングを研究推進の第一案としており、この前提条件である「酵母が遊離3NTをチロシン化できる」ことの解析・確認に時間を要し、結果この条件が成立しなかったことが、進捗を遅らせている原因である。
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今後の研究の推進方策 |
遊離3NTを用いたスクリーニングは困難であると考えられたことから、今後は生化学的手法および遺伝学的手法により脱ニトロ化酵素を探索する(申請書, 研究計画1-3)。以降の解析は、申請書に従って遂行する。
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