前年度の結果より、酵母細胞抽出液のプロテアーゼ活性が極めて高いため、グルタミン合成酵素Gln1をニトロ化したものをモデル基質として脱ニトロ化酵素(DNT)活性を高感度で測定することは、困難であると分かった。そこで、Gln1に代わるDNT活性の基質を探索するため、酸性亜硝酸処理した細胞からニトロ化タンパク質を探索した。定量的プロテオーム解析を行うため、硫酸アンモニウム(硫安)を単一窒素源とする最少培地(SD培地)で培養した。その際、15Nラベルした硫安を単一窒素源としたSD培地で培養した酵母を酸性亜硝酸条件で処理し、通常のSD培地で培養した酵母をコントロールとして用いた。両者から抽出したタンパク質を等量ずつ混合し、SDS-PAGEの後、LC-MS/MS解析により、15N/14Nを含むペプチドシグナルの比率からニトロ化タンパク質を定量的に解析した。その結果、複数のタンパク質が酸性亜硝酸処理によりニトロ化されることを見出した。また、これらのタンパク質のニトロ化部位に相当するチロシン残基も同定した。現在、これらのタンパク質をエピトープタグ融合型タンパク質として発現する株を構築し、免疫沈降と抗ニトロチロシン抗体を用いたウェスタンブロットにより、ニトロ化修飾の再現性を確認している。 一方、酸性亜硝酸処理した細胞から得た抽出液を、遠心分離により分画しウェスタンブロット解析を行った結果、ニトロ化タンパク質の多くは不要性画分に存在することが分かった。このことから、ニトロ化が特に膜タンパク質において起こっている可能性が示唆された。上記スクリーニングは可溶性画分のタンパク質を対象としたものであるため、現在、膜タンパク質を対象に同様のスクリーニングを行っている。
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