本研究では,記憶を担う脳の海馬における,シータ進行波に基づく時系列を時空間的に表現し時系列記憶を形成する可能性について,計算機シミュレーションにより調査した.結果として,シータ進行波を説明可能な特定の方向に伝播する神経活動の生成,さらに,入力を反映する神経活動伝播の効率的な生成を実現する機構が海馬CA3領域に存在することが示された.その神経活動の生成によって,海馬CA3で時系列情報の空間的な展開を実現できることから,時系列を時空間的に表現することによる時系列記憶の形成が海馬で実現可能であることが示唆される.
|