本研究では、現代沖縄の重層的な権力構造の基で行われる軍用跡地開発を例に、そこでの社会空間の再構築について文化人類学的に探究した。具体的には、沖縄戦と軍用地接収により強制移住を経験した住民集団が、返還後の再開発で主体的に生活空間と宗教空間を再建する過程を考察した。その結果、跡地再開発に伴い、①戦前からの聖地の復興や、過去の集落景観のアーカイブ化、②米軍政時代の記憶表象の活発化、が明らかになった。再開発によって町が賑わうという表面的な変化の中で、過去の記憶表象活動は住民にとって過去を取り戻し自己を見つめる行為であり、記憶の植え込みは社会空間を再構築するうえで重要な意味を成している。
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