癌治療における漢方薬の有用性は、化学療法に伴う副作用対策や緩和ケア領域のみならず、癌転移抑制・再発抑制作用など数多く報告されてきた。しかしその使用が経験則や古典の記載を基とし、作用機序が明らかでないことが障害となり、敬遠されることも否めない。作用機序が判明すれば、癌治療領域においても、有効な治療手段の1つとなると考え、当研究室で構築した既存薬ライブラリーの中の漢方薬成分を使用し、これまでおこなってきた研究を基に、癌特有の糖代謝から正常細胞が主として使用するミトコンドリア呼吸へ代謝変動を誘導するもの、および転移の原因でもある上皮間葉転換を抑制するものを選別し、その分子機構の解明をすすめている。
|