研究課題/領域番号 |
15K21441
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安藤 正浩 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院助教) (50620803)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ラマン分光法 / 細胞 / 多変量解析 / 分子解析 / 非破壊分析 |
研究実績の概要 |
顕微ラマン分光法は非破壊・非染色の分析手法であり、生細胞の種類・状態を分子科学的に同定できる可能性がある。しかし、細胞内部構造や構成分子成分の多様性から、細胞内各所から得られるラマンスペクトルは、多数の分子成分由来のスペクトルが重ね合わされた複雑な形状を示し、純粋な分子成分のスペクトル寄与を抽出することは困難を要する。本研究課題では、生細胞の空間分解測定で得られる多数のスペクトルを同時に多変量解析することで、構成分子成分の多様性を考慮した高精度の細胞識別法を開発することを目的としている。 平成29年度は、細胞由来のスペクトルから分子帰属可能なスペクトルを分解し、それをもとに細胞識別する手法を開発した。分子情報を効率よく抽出するためには、細胞内で多点測定し、場所に応じた分子分布の違いを反映したスペクトルデータセットの取得が必要である。さらに、異なる細胞種のデータを同時に扱い、多変量スペクトル分解をすることで、各細胞種の識別に当たり特徴的な分子成分スペクトルの抽出が可能となった。脂質や色素・酵素成分の特徴的なスペクトルが分離でき、それらの1細胞当たりの含有量の違いから、細胞識別する手法を開発した。これまでのラマン分光法の応用では困難なことが多かった、分子科学的な知見に基づく細胞識別法を実現することができ、生物・医学分野で有用な非破壊・非染色細胞識別法となると期待される。今後、この解析法とデータ取得のアルゴリズムを同期し、顕微鏡下で観測しながら細胞の識別を可能とするシステムを完成させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成29年度は装置の故障などが続き、実験装置系の進展が遅れてしまった。ただし、これまでに測定していたデータを使って、解析法の開発は十分に進展した。今後、その解析法に最適な方法でデータ取得が出来るよう、装置の改良が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
分子レベル解析に則った細胞識別を可能とするため、細胞内の空間分解測定と多変量解析を組み合わせた装置を完成させる。解析法はほぼ完成しているが、それに必要なデータ取得が可能な装置のプログラミングが必要である。細胞の多点測定をできるプログラムを作成し、それと解析アルゴリズムを同期させる。それをもって、癌細胞や光合成細胞の識別へ応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の故障などが続き、実験装置系の構築が遅れてしまった。これまでに開発した解析法に適した顕微ラマンシステムを構築するため、顕微分光システムと制御・解析システムのための光学部品やコンピュータ購入に当てる。
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