本研究は、東日本大震災で被災した東北朝鮮学校を事例として、多文化共生の危機を考察した。同校は、被災直後に地方自治体からの補助金が停止された。また、災害復旧のための国庫補助も受けられなかった。本研究は同校が現在に置かれているこのような公的無援状況を史的に紐解いた。 その結果、公的支援が「人権の論理」ではなく「国家の論理」に支配されるようになったこと、そしてそれが同校に過度な自助努力を強い,孤立感を深めさせていること明らかにした。そうして多文化共生の危機は、在日朝鮮人が集住する神戸のような地域より、少数の在日朝鮮人が拡散して居住する仙台(東北)のような地域においてより深刻であることを主張した。
|