研究課題/領域番号 |
15K21521
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田村 香月子 関西大学, 商学部, 准教授 (40411491)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 信用格付け / 医療機関 / 病院 / 資金調達 / 財務評価 |
研究実績の概要 |
本研究は医療機関の経営と財務の安定のために多様な資金調達の必要性が高まる状況において、すでに資金調達が多様化し信用力や安定性の評価が進んでいるアメリカの事例を比較しつつ、信用格付けの視点を取り入れ、医療機関の経営財務評価の新たな枠組みと必要な制度的構造を明らかにすることを目的としている。 本研究期間の初年度にあたる平成27年度は、当初計画の通り、日本の医療機関の財務や経営に関する文献資料、およびアメリカの医療機関ファイナンスの文献資料をを入手し、文献調査から開始した。医療機関に関する文献は会計から経営手法まで多岐にわたるため、本研究の目的に沿って文献内容を精査し、日米の医療機関の信用力評価に係る先行研究のリサーチを行った。 一方、格付けと諸指標の関連性を分析し信用力評価において重視される要素を明らかにするため、信用格付けを取得している医療機関の決算データの入手に着手した。これについては入手可能な平成24年度、平成25年度、平成26年度の各医療機関の財務諸表のうち開示可能なものをできる限り入手した。入手にあたっては、対象医療機関の法人形態によって開示方法が異なるため、個別所在地自治体の医療課等に情報公開請求を行うほか、財団法人の場合には公益法人インフォメーションを用いて資料収集したが、法人種類上情報開示がなされていない医療機関もあった。 また入力したデータを用いて統計的分析を行うため、個々の財務諸表の数値を正確に入力し、データベースを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は当初の計画通り文献調査から開始し、これは順調にすすめることができた。 一方で医療機関財務データの入手に関しては少々の遅れが生じた。法人形態により入手方法が異なり、また格付取得医療機関の法人形態が、研究計画立案時と平成27年度の研究着手時で変化している事例があったため、確認や申請手続きが複雑となり、当初の計画予測以上に時間を有したことが原因である。 また平成27年度後期に健康上の理由から進捗状況に遅れが生じた。現在はほぼ回復し、研究に復帰しているが、当初の計画からの遅れがまだ少し残っている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、信用評価に必要とされる制度的構造を明らかにするため、主に日米の医療機関をめぐる評価制度の比較分析を行う予定である。 評価制度の調査にあたっては、前年度の調査から得られた知見をもとに現状の制度との比較を行い、必要があれば実務家へのヒアリング調査を行う予定である。また医療機関の資金調達多様化に必要な制度を考察するために、米国の医療機関債市場や格付の状況と、日本の現状とを比較分析する。米国の現状については文献調査、米国の関連団体および研究者へのインタビューを計画している。日本の現状については文献調査、各種省庁および支援機関の公表する統計の他、実務家へのインタビューを計画している。以上から、医療機関の経営財務評価に重要な視点および評価に必要な制度を考察し、論文学会報告等で発信していく所存である。 いずれにおいても、平成27年度の進捗の遅れがいまだ残っているため、残部を以上の内容とともに積極的かつ効率的に研究を進める必要がある。したがって、データ入力等は補助を雇用するなど、正確性に配慮しつつ、外部委託可能な業務は委託し、効率化を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度において、医療機関財務データの入手に関しては少々の遅れが生じたため、データ入力等が計画通り進まず、人件費に差が生じた。 また平成27年度後期に健康上の理由から進捗状況に遅れが生じた。このため、計画していた研究業績の発表にかかる物品費や旅費、論文投稿に係る費用等が使用できずに残ってしまった。このため、平成28年度に次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、平成27年度に計画していた研究の残部に係る図書等の物品と、研究業績発表のために主に利用する。 具体的には、対象医療機関の最新の財務データの収集と入力に係る物品費や人件費、また業績発表のための意見交換や、学会出席への旅費等に使用する計画である。
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