仰臥位でケリーパッドを用いた洗髪援助は、基本的な看護技術であり、臨床や在宅でも広く用いられているが、実際の活用では、洗髪時に対象者の安楽な体位の工夫が必要であり、筋の緊張を和らげるために膝の下へ枕を挿入することが推奨されている。しかし、その枕の具体的な挿入方法や科学的根拠に関する報告は見当たらない。 そこで、本研究では仰臥位でケリーパッドを用いて洗髪を受けるときの対象者の体位、特に股関節と膝関節の関節角度に着目し、①洗髪時の安楽な体位の特定と、②洗髪時の股関節と膝関節の屈曲が対象者の心身の安楽に及ぼす影響についての検証を目的とした。 平成27~28年度では、①仰臥位でケリーパッドを用いた洗髪援助における股関節と膝関節からみた安楽な体位を明らかにするために、プレ実験を行い、研究代表者所属機関及び実験施設における倫理審査委員会に承認を得た上で、高齢者51名(男性23名、女性28名)を対象として実験研究を行った。結果、高齢者が洗髪時に安楽だと感じる股関節と膝関節の関節屈曲角度は、高齢者の年齢、性別、体格とは関係なく、ある一定の値をとることが明らかとなった。 平成29年度では、②洗髪時の股関節と膝関節の屈曲が対象者の心身の安楽に及ぼす影響について検討するために、研究代表者所属機関において倫理審査委員会の承認を得、高齢者23名(男性11名、女性12名)を対象とし、1名が股関節と膝関節を屈曲した場合と伸展した場合の2回洗髪援助を受ける方法(クロスオーバー比較試験)にて実験研究を行った。結果、対象者は股関節と膝関節を屈曲したほうが安楽だと感じていることが明らかとなった。 平成30年度では、研究代表者所属機関及び臨床施設の倫理審査委員会の承認を得て、実際にケリーパッドを用いて洗髪援助が必要な入院患者を対象とし臨床にて実験研究を行っている。今後、それらデータの解析を行い、検討や考察を行う。
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