研究課題
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
脳内の神経ネットワークで、神経細胞間で情報はシナプスを介して軸索から樹状突起へと伝わる。シナプスの樹状突起側は棘のような構造を取り、スパインと呼ばれている。スパインの大きさは記憶や学習の過程で変化することが報告されており、その制御機構の解析は精神疾患の病態を理解する上でも重要と考えられている。本研究ではタンパク質のHECT型E3ユビキチンリガーゼによって触媒されるユビキチン化に注目して、特異的なユビキチン化がどのようにスパイン形成をはじめとした神経細胞の発達を制御するかを明らかにしてきた。
本課題の研究で、これまで未知の部分が多かったユビキチン化による神経細胞発達の制御機構に関して、多くの知見が得られた。中でも知的障害を伴う発達障害であるKaufman症候群の原因遺伝子でE3ユビキチンリガーゼをコードするUbe3Bが、スパインの形成と形態を制御する機構を見出した。この成果は将来的に知的障害の原因の解明や治療に発展する可能性がある。
神経科学